【d!】必要とされたい【短編集】 (ページ7)

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〇庇護欲＊tn ページ7

(tn side)

普段、めちゃめちゃ元気なAがしょんぼりしている。こういうとき男なら抱きしめるのがいいとはわかってはいる。ただ、その勇気がでない。

tn｢A…？どうしたんや？｣
｢とん、と……｣

俺が声をかけると、彼女の両の目からぼたぼたと大粒の涙が零れ落ちる。それを見た瞬間、今まで躊躇っていたのが嘘のように、彼女の体をいとも容易く抱きしめることができた。

tn｢今はええ。なんもいわんでええ｣
｢〜〜っ｣
tn｢辛いことあったんやな。話したくなったらはなせばええ。気が済むまで泣いてええから｣

俺がすっぽりと覆い隠せてしまうほどに小さい身体。こんなに肩ちいさかったか？と心の中で自問する。頭を撫でると小さな嗚咽が聞こえた。

tn｢声も我慢せんでええ。なんも我慢せんでいいから。大声で泣きたいなら泣いたらええ。俺が全部受け止めたるから｣
｢ぅ、あぁっ…とんと、とんとんっ……｣
tn｢なんやぁ？俺はここにおるで。Aのこと、抱きしめとるで｣

俺に必死にしがみついて、声を上げながら泣き続けるAが愛おしくてたまらない。弱さを見せてくれるのが嬉しい。これが庇護欲というやつなのだろうか。

｢とんとんっ、くるしいの、つらいの。むねがぎゅーって締め付けられて、くるしい。息ができないの｣
tn｢そか。俺になんかできることある？｣
｢ちゅー、ちゅーして、｣
tn｢ええで。何回でもしたる｣

顔を上げたAは、目は真っ赤で、涙でぐちゃぐちゃの酷い顔をしていた。それすらも愛おしくて、守りたいという気持ちが湧き上がってくる。

啄むような、触れるだけの口付けを何回も何回も繰り返す。ちゅ、ちゅ…というリップ音が部屋に響く。

tn｢ん、ちゅ、は……｣
｢とんとん、好き｣
tn｢俺は愛してるで？｣
｢な、っも、そんなこと言うキャラじゃないじゃん〜｣

照れたように俺の胸に顔を埋める様子がものすごく可愛くて、きゅぅ…と胸が締め付けられる。再びAを抱きしめながら、いっぱい甘やかすのもええなとしみじみと思った。