【d!】必要とされたい【短編集】 (ページ6)

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〇3分だけ＊ut ページ6

(ut side)

スマホを見ながらぐだーっとしていると、腕の間にAちゃんが入り込んできて、俺の胸に顔を埋める。普段はキリッとしているから、俺にだけにしか見せないこの姿が愛おしい。

｢…3分だけ、3分だけこうさせて｣
ut｢んー？3分じゃなくてええんよ？｣
｢…ん｣

スマホを置いて、彼女の頭を優しく撫でる。綺麗な髪を指で梳いて、背中をとん、とん、と優しく叩くと小さく肩が震え出した。

ut｢Aちゃん、なんかしてほしいことある？｣
｢ない｣
ut｢そっか｣

｢ない｣っていうのは彼女なりの｢甘やかして｣の合図。素直じゃなくて、俺が守ってやらないと、という気持ちが溢れ出す。

ut｢もっと素直になってもええのに｣
｢素直だもん｣
ut｢そういうとことも俺は好きやで｣
｢うるさい｣

ぎゅ、と抱きつく力が強くなる。嗚咽も、泣き声も出さずに、俺の腕の中で静かに涙を流し続けている。付き合いたての頃は｢大丈夫？｣とか｢話してみ？｣とか言ってたけれど、彼女にとってそれは逆効果のようで、すぐに離れていってしまう。だから俺は無言で、頭を撫で続ける。

多分数十分。それくらい経ってから、Aちゃんが俺から離れていく。顔は髪で隠れて見えない。

ut｢10分は経っとるで？｣
｢3分だもん｣
ut｢ふはっ、そうやな。3分やな｣
｢うん｣

こんなときも素直じゃない。未だに顔を伏せている彼女の頭に優しくキスを落として、頬を擦り寄せる。

ut｢Aちゃん、大好きやで｣
｢知ってる｣
ut｢頑張り屋で、素直じゃなくて、俺にだけ甘えてくるAちゃんが可愛くてしゃーないんや｣
｢知ってる｣
ut｢ふふ、そっか。知っとるか｣

その反応に頬が緩む。ぽんぽん、と頭を撫でて席を立とうとした。きゅ、と不意に袖を掴まれて動けなくなる。

｢うつ｣
ut｢ど、した？｣
｢ありがと…｣

俺を見上げながら真っ赤な顔でお礼を言われる。珍しいその反応に、思わずその場で蹲った。

ut｢はー、ずるいわぁ…ほんまに…｣
｢たまには言わないと…嫌われたくないから…｣

嫌いになるわけないのに。
素直じゃないのに、ちょっぴり気にしいな彼女を一生護っていこうと心に強く誓った。