生まれた世界に乞う弐 (ページ5)

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炎の呼吸伍拾伍ノ型ページ5

私の手を掴み、新幹線をも超える速さで走るAちゃん。
Aちゃんとの戦いで作った傷が、走ったことにより悪化するがそれを治癒して自己治癒が追いつかず傷が深くなって浅くなるのを繰り返している。
正直Aちゃんがどこに向かっているかわからないし、Aちゃんより先に走り出した白髪の傷だらけの男の人の姿なんて走り続けても見えやしない。
ただの人間がこれほどの力を身につけられるなんて、私はこうして生きているだけで幸運だ。
Aちゃんは柱だ、今でも十分だがこれ以上に力をつけていたら私は今頃死んでいただろう。

「Aちゃ」

「黙っていてください、貴方は走ることに集中して」

気がつけば建物の数が減り、塗装された道も減っていた。
山の方に近づいて来たのだろうか、草木が多い気がする。
Aちゃんの足はそのまま山の方へと一直線に向かい、奥へと進むうちにチラホラと藤の花が視界に入るようになった。
そう言えば藤の花は鬼避けになるんだったな、と呑気に考えながら走り続ける。
この頃には足以外の傷は完治していた。

「ぶえっ」

Aちゃんの背中に激突して、思わず変な声を上げる。
あれだけの速さで走って、勢いよくぶつかったのにも関わらずAちゃんの体はビクともしなかった。
背中硬いな…と思いながらAちゃんの背中から顔を出すと、辺り一面に藤の花が咲き誇り、辺り一面を覆い尽くしていた。

「さて、ここからは私が運びます」

「へ？」

「鬼が藤の花に弱いとはいえ、鬼に御館様の居所を知られる訳にはいきませんから」

おやすみなさい、Aちゃんのその言葉を最後に私の視界は真っ暗になった。