炎の呼吸 伍拾参ノ型 ページ3
「貴方も今まで見てきたでしょう!!鬼に手をかけられる非力な人達を!!私達はなぜ闘っているのですか!?鬼をこの世から滅殺する為です!」
「だからって悪い鬼ばかりじゃありません!!すぐ側で見てきたAさんならわかるんじゃないですか!?見ノ木さんが、見ノ木さんが本当に悪い鬼かどうか!!」
「Aちゃん…お願い、私達友達じゃない…お願い、信じて…!」
「そうです、友達です。今でもそう思っています。だからこそ私は貴方を滅するのです。
私達は鬼を滅ぼすと誓った、貴方を間違った道へ歩ませたくありません。
私は友として貴方を公正したいの」
逃げられないように涙を流すAちゃんの胸ぐらを掴み、刀を首元に添えた。
優しく、優しく微笑んでAちゃんの目を見つめながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「次会うときはお互い地獄で、かしら?この世の平和の為に、その首頂くわ」
Aちゃんは抵抗もせず、死を受け入れるかのようにギュッと目を閉じた。
腕に力を込め、刀を突き立てた瞬間だった。
私の鎹鴉が鳴き声を上げて上空を飛び回った。
「カァー!カァー!伝令、伝令!」
「鬼ノ始祖デアル見ノ木Aヲ生ケ捕リニセヨ!!」
鎹鴉はカァー!と鳴き声を上げて伝令を繰り返す。
やるせない気持ちでいっぱいだった。
ここでこの子を殺せば私達はもうこんなことをしないで済むというのに。
どうしてなの…。
それでもこれは御館様のご意向だ、私は従わなければならない。
「…命拾いしましたね」
私はAちゃんの胸倉から手を離し、刀を鞘に納めた。
きっと今日の為に集めた隊士達も、今頃屋敷に帰っているのだろう。
御館様が私の作戦を許諾したのも、この為だったのね…。
「Aちゃん…」
「A」
Aちゃんの言葉と被せるようにして、誰かが私に声をかけた。
「不死川…」
不死川は何故かロープで縛った嘴平君を担いでいた。
口も塞がれている嘴平君は呻き声を上げながらじたばたと体を動かしていた。
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作者名:くゎじゅ | 作成日時:2021年5月10日 1時