炎の呼吸 陸拾弐ノ型 ページ12
「それで、Aは記憶が無いのに片割れの存在はどうやって見つけたんだい?」
「…私に鬼を増やす力は無いから」
あの後、何匹もの鬼を見た。
私は鬼を作ろうと試みたが、それもまた失敗に終わった。
私以外の鬼が居ないこの世界で、どうやって鬼を増やすのか。
それは私が鬼である体の半分を使ってもう1人の私を作ったという事になる。
だから私は人間と鬼の半分の血を引きながらも、太陽を克服したし人間の食べ物だけでも生きてこれた。
「…そうかい。そうだとしても、Aが今まで人間を殺してきた事は許し難い行為だ。Aの身柄はキメツ学園で預かるが、きっと誰も良い顔をしない。時には心無い言葉をかけられるだろう」
「…関係無い」
私は本当に反省していた。
烏野でたくさんの人と出会い、人間として生きる楽しさを知った。
人は尊く、守るものだと思い始めた。
私は鬼である事を捨てるつもりでいる。
「私は人を守る、守りたい。私はもう人を食わないし殺さない。バレー部のみんなが教えてくれたの。怖いのにここまで来てくれた力や、私を信じてくれた炭治郎君の気持ちにも応えたい。お願いします。私にも、鬼を滅ぼす手伝いをさせてください」
私はゆっくりと頭を下げた。
砂利を踏む音が聞こえ、隣を見ると力が私の横に立っていた。
「…俺からも、お願いします」
力も私と同じ様に頭を下げた。
その光景を見て、私は今まで人間を食って来たことや、無意味に鬼を増やそうとした事を強く後悔した。
「御館様、私からもよろしいでしょう」
「勿論だよ」
凛とした力強い声。
Aちゃんの声だった。
「竈門君は、自前の嗅覚で感情すら嗅ぎ分ける子です。あの子に、Aちゃんは悪い鬼じゃないと言われました。私は正直半信半疑だし、これまでの鬼の悪行を許せません。それはAちゃんも同じです」
「でも、私は賭けてみたいんです。禰豆子ちゃんが人間を守り、共に戦った様にAちゃんも人間を守れると、鬼を滅ぼす手助けをしてくれると」
「A!!それは竈門少女が稀血に背き、人間を襲わないと証明されたからだろう!!」
「それを実現するとなると、また不死川が余計な傷を作るわ。竈門君はこれまでの実績があります。前世の事、勿論今世でも。竈門君の言葉を信じても良いのではないでしょうか」
Aちゃんが間接的に私を庇ってくれた…。
それでも柱は不満げにしていたが、産屋敷だけは微笑んだままだった。
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作者名:くゎじゅ | 作成日時:2021年5月10日 1時