炎の呼吸 伍拾弐ノ型 ページ2
どうにかAちゃんから逃れようと走っていると、ふと後ろでAちゃんが動きを止めた。
ようやく諦めてくれたのかと私も足を止め、Aちゃんの方へ向き直った。
Aちゃんは何も言わず、ただ静かに俯いていた。
「Aちゃん…?」
一歩、Aちゃんの元へ足を踏み出した時だった。
ゴオオ、と音が鳴り、Aちゃんの赫い刀身から炎が立ち上った。
ハッとして距離を取ろうとしたが、間に合わなかった。
Aちゃんは今でも私を殺すつもりだったんだ。
炎の呼吸 奥義 仇ノ型
煉獄
一瞬の出来事だった。
Aちゃんが目の前に来て、風圧で体が揺らぎ頭が割れるほどの轟音に耳を支配された。
今までとは比べ物にならないぐらい速い…速すぎる…!
間に合わない、間に合わない…!
Aちゃんの手元から炎が放たれるその時だった。
「Aさん!!」
体育館から聞こえた声に、Aちゃんは手を止めた。
刃はすんでのところで止まり、皮膚が裂けた首からは血が滴り落ちたが、その傷もすぐに塞がってしまった。
Aちゃんは私に刀を向けたまま、細い唇をゆっくりと動かした。
「…正気ですか、竈門君」
「その人は…その人は、悪い鬼じゃありません!!!」
「鬼殺の妨害行為は隊律違反です、考えを改めなさい」
「Aさんも本当は、その人を殺したくないんじゃないか!!」
「黙りなさい」
「Aさんからは、悲しい匂いがします!!その人のことを、大事に思ってるんじゃないですか!!?」
「いい加減に…」
「本当にその人は悪い鬼ですか!!?」
「黙りなさい!!」
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作者名:くゎじゅ | 作成日時:2021年5月10日 1時