高嶺の花 3

可愛い絆創膏 ページ10

「痛っ！…あーあ…やっちゃった」



ぼーっと考え事しながら包丁使ってたから手を切っちゃった。

そんなに深くは切ってないからよかったけど
ズキズキと痛んできた傷口はまるで私の心の状態を表してるみたい。


とりあえずキッチンペーパーで滲む血を押えて
絆創膏あったかなーなんて思いながら
ゴソゴソとそこらへんを漁る。


絆創膏見つけたけど一般的な肌色の物じゃなくて
キャラクターが描いてあるカラフルな絆創膏。

ファンなら知ってるsayuさんが好きなキャラクターで
インスタにもよくこのキャラクターのぬいぐるみとかグッズを載せてる。


てことは間違いなくこれはsayuさんの物。
物に罪はないけど今の私はそれがこの場所にあるだけで気分が悪いからゴミ箱にぶち込む。


他に絆創膏ないけど仕方ないか
意地でもあの絆創膏は使いたくないし

まだ滲んでる血をキッチンペーパーで抑えて
止まるのを待つ。


そんな時に剛典は帰ってきたみたいで
玄関のドアが開く音が聞こえる。
いつもは出迎えに行くんだけど
ここからおかえりなさいって言うだけなのは
少し気が立っててそんな余裕がないから。


「なにやってんの？って…手切ってんじゃん」


立ち尽くして止血してる私を不思議に思った剛典は
帽子も脱がずにこちらへと来て
傷口に気付くと少し驚いてる。


「大丈夫、そんな深く切ってないから。血止まるまで待ってるだけ」


「確かどっかに絆創膏なかった？」


なかったよって答えたのに確かにあったんだよねーなんて言いながら私と同じように色んな引き出しをゴソゴソしてる


「キャラクターのやつなかったっけ？あれ置いてたのAでしょ？」



「…違う。置いたの元カノじゃないの？」


嫌味ったらしく放った言葉に一瞬止まる空気。
剛典は引き出しを閉めながら小さな声でごめんと謝る


気まずい空気が流れて
私も言わなきゃよかったからなんて今更少し後悔したりして。


「コンビニで買ってくるから待ってて。」


大丈夫って言うのに剛典は財布だけ握り締めて部屋を出てった。


最悪…。このままじゃ気まずくなっちゃうじゃん。
こないだから上手くいかなくて
今日までこんな感じだったら本当にダメになっちゃうよ

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