高嶺の花 ２

お母さん ページ47

自分のマンションのエントランスが見えてきて
あともう少しって所でカバンの中でスマホが震える
そのしつこさはラインじゃなくて着信で
慌ててカバンに手を突っ込んで隠れんぼしてるスマホを見つけ出す


お母さんと表示されてる画面
切れる前に着信ボタンを押してもしもしと電話に出る



「お母さんどうし…」


「もう！あんた何処にいるの！」


私が全て言い終わる前にお母さんの声に掻き消されて
何故かプンプンしてるお母さんに不思議に思いながらも
もうすぐ家に着くって事を伝えて



「今日泊まりに行くって言っといたでしょー！なかなか帰って来ないからずっと待ってたのよ！」



あれ？…そうだっけ？
自分の記憶を辿ってもそんな予定には行き着かなくて
でも実際来てるから多分聞いてた話のはず


「ごめんごめん！もうすぐ着くから待ってて。１回切るよ？」


まだワーワー言ってるお母さんを無視して
乗り込んだエレベーターの上がっていく階数を見つめる。


ポンッと言う音に少し遅れてドアが開いて
完全にドアが開く前に間をすり抜けて自分の部屋へと向かう。


すぐに見えてきた部屋の前には大きなバッグを抱えてるお母さん
私を見つけてやっと帰ってきた！なんてまたプンプンしてる


「ごめんね！すっかり忘れてて」


ガチャガチャと鍵を開けて荷物持って上げて
部屋へと招き入れる。
最近よく剛典が来るから部屋は綺麗にしてあるし、よかった。


「今日源様のコンサートがあるから泊めてって前からお願いしてたじゃない」


「コンサートって古いよ、お母さん」


はいはいって何度目かわからないごめんねを言って
話題を変えるために源様どうだった？って聞くと
お母さんは上機嫌にキャーキャー言いながら話してくれる。


今日はお母さんの大好きな星野源さんのライブだったらしくて
こっちの友達と参戦する為に東京まで出てきたんだって。

そう言えばライブが当たったー！って電話来た時
泊めてって言ってたような…


うん、まぁなにはともあれ久しぶりに会えたしよかった。
ライブのTシャツを着てタオルを首を巻いて
まだ興奮気味のお母さんを見てたら
ギスギスしてた心も少し落ち着いたかも。

ご対面→←帰り道の憂鬱

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す