高嶺の花 ２

今日が最後/剛典side ページ5

＊剛典side


「剛典…来てくれて嬉しい」


胸板に顔を擦り寄せて甘える素振りを見せて
当たり前のように俺に抱きつく


…前はこれが可愛いと思ってたんだけどな


彼女には応えずそっと肩を押して身体を離すと
潤んだ目で俺を見上げてる


「もう助けてあげられないから後は事務所の人に頼みなよ」


付き合ってる時からストーカーされてたみたいで
怖い思いをする度俺は彼女の為に駆け付けてた

付き合ってるなら当たり前だと思ってたし
好きな子を守るのは何一つ苦痛じゃなかった

でも今俺はその役目をしてやれない
もう彼女の側に居て守ってやる事もできない


今日が最後
はっきりと彼女に伝えるつもりでここへとやって来た


「だって事務所の人は四六時中守ってくれないんだよ？剛典は私の事心配じゃないの？」


「俺だって四六時中守ってやれない。それに俺たちはもう終わったんだから…もう頼られても助けてあげられない。」



なんでって呟きながら彼女はポロポロと涙を流して
それでも心が揺らぐこともないのは
きっとAちゃんの存在が大きすぎるから


「これからはその子を守るの？あたしじゃなくてその子の側にいるの？」


「そうだよ。俺はもうあの子じゃないと無理だから」



無駄な期待なんて残さないように
俺は彼女の目を真っ直ぐ見つめた



「本当に今日が最後だから」

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