高嶺の花 ２

優しさ ページ32

隣にあった捜し物の入った紙袋を持って事務所へと向かう。

似たような紙袋置かないでよね…
２分１でダメな方引き当てちゃう私も運ないけど


あの紙袋の中身、いっその事捨ててやろうかと思ったけど…そこまで勇気が出なくてせめてもの抵抗で見つけちゃいましたよって嫌味を込めてリビングのテーブルの上に出してきてやった


剛典あれに気づいたら焦るかな？
それともなんも思わないのかな？


私がこんなにモヤモヤしてんだから剛典も少しは焦ればいいのに。




そんな性格の悪い私が少し出てきて
なんで人を好きになるとこんなに心が狭くなるんだろうって曇り気味の空を見上げて

今にも雨が降りそうな空も
ジメジメした空気もまるで私みたい



「おー！ありがとな！ほんま助かったわ」


就業前事務所のジムに居ると言う山下さんに会いに行って預かり物を渡して


「めんどくさい事頼んでごめんな、どうしても必要やってん」


「全然大丈夫ですよ、どうせ同じ会社に居るんですし」



トレーニングしてた様子の山下さんは一旦手を止めてくれて
ベンチに座りながら私を見上げてる


「これ見てみ」


見せられたのは剛典と山下さんのライン画面
これを渡す為の段取りのやり取りの後


『無駄にAと喋んないでくださいよー。俺だってAに会いたくても会えないのに健二郎さんずるい』


って言葉が送られてきてて
愛されてんなーなんてニヤニヤしてる


「愛…されてるんですかね」


はぐらかすような答えと出来るだけの笑顔
もっと上手く交わせればいいのに今の私にはこれが限界


そんな私に気づいてると思うけどそれ以上はなにも聞かないのがきっと山下さんの優しさ


「自信持ってええと思うけどな」


ベンチから立ち上がった山下さんは私の頭をポンポンと2回撫でてくれて
優しさが心に広がって目頭が熱くなった

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