もう少し ページ10
水田さんと話をしている間、手には左からの暖かい温もり。
本来ならばすぐによけたりするのだろうけど、今日の私は、いや今の川西さんの隣にいる私はいつもとは違う。
よけないという選択肢を選んだ。
恋を意識し始めたからだけではなく、何故だか幼い頃から知ってる温もりに近かった。
養父なのか、母なのか…………
それとも別の誰かなのか………
綾部くんとは違う確かな安心感。
今はそれだけで良い。
水田さんとの話も一段落し、やっと左側の温もりにシフトチェンジ。
この確かな安心感を感じながら、いつもよりはスラスラ話せている自分。
私の事を少しでも知ってくれている川西さん。
人とは単純なもので、意識している相手が自分の事を少しでもわかっていると嬉しくなるものだ。
もう少しだけとお願いをして握ってもらっている手。
もう少しだけ、この安心感に包まれていたい。
包まれていたいのにお開き。
お店を出た後はみんなチリヂリ。
もう少しだけ、一緒にいたい。
こんな時、何て言えば正解?
何て言えば一緒にいてくれる?
自問自答は止まらない。
川西「大通りまで一緒にいきましょか?
タクシーひろうやろ?」
これだ!!
薫「はい!!」
暗いとは言えまだ人通りが多い。
離れない様に袖口を掴んでみると、繋がれた右手。
さりげなく車道側を歩いてくれる優しさ。
このまま少しだけ時間が止まれば良いと思う。
もう少し、このままで
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作者名:美音 | 作成日時:2019年2月28日 16時