四十一話/非常事態の詳細 ページ41
正面、声の主が此方に向かって歩いてくる。
「ーーーー」
見れば、敦にとっては昨夜、問答無用で床に叩き付けられたという印象が強い、というかそれしかない眼鏡の男ーー国木田が太宰に指を差していた。
「この、包帯無駄遣い装置!」
国木田のその一言に一瞬空気が凍りつく。
「……国木田君、今の呼称はどうかと思う」
「この非常事態に何をとろとろ歩いているのだ!疾く来い!」
などと朝から道のど真ん中で騒ぐ大人二人にAは、
「『包帯無駄遣い装置』か……私も次からそう呼ぼうかな」
「Aちゃん!?」
「あ、敦君聞いてた?」
何やら可笑しなことを呟いていたので盛大に突っ込んでおいた。
「ーーーー」
と、そこで先程の国木田の言葉に疑問を覚えた敦は、思い出したように口を開く。危ない、忘れるところだった。
「あの……『非常事態』って?」
「ーー『非常事態』になのにこんなことしてていいんですか?」
「ぐッ……そ、うだった!!探偵社に来い!人手が要る!」
敦に続けられたAの正論に国木田が
彼の滲み出る焦り。それを感じ取ったのか、先程まで国木田に滅茶苦茶にされていた太宰は立ち上がり、「何で?」と疑問を口にした。
「ーーーー」
同僚の質問を受け、国木田がゆっくりと口を開く。
実際には一秒にも満たないであろうその時間は、しかし敦には十秒にも二十秒にも感ぜられた。
そして、時間が引き伸ばされる感覚に敦が喉を鳴らすのと、
「爆弾魔がーー人質を連れて探偵社に立て籠った!」
国木田が『非常事態』の詳細を叫んだのは寸分違わず同時だった。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時