三話/ 抜き足差し足忍び足 ページ3
敦はAの視線の意図に気づいたらしく、頷くように顎を引いた。
「ーーーー」
Aと敦は抜き足差し足で此処から離れようとーー厳密に云うと世間一般的に見ると頭の可笑しい男から逃げようと歩き出した。
「まあーー」
男が立ち上がる。
ーーこの男に捕まったら
そう直感で感じたAは慎重に、けれども早く先程よりも足を前へ前へと進める。
「人に迷惑をかけない清くクリーンな自`殺が私の心情だ」
そこで急に敦が歩みを止めた。
如何したのかと顔を覗き込むと、互いに青い顔をした敦とAの視線が交差する。
「大丈夫?」
Aが心配そうに小声で尋ねるとーー、
「ーー忘れてた、僕あの人にご馳走を…」
敦がそうぽつり、と呟いた。この間にも男は話を続けている。
ーー早く、早くしないと
「ご馳走なら私がするから……ね?」
Aは半泣きになり乍ら敦に訴えかけた。
その間時間にして十秒程であったが
たかが十秒、されど十秒ーー
「だのに君達に迷惑をかけた。これは此方の落ち度、何かお詫びを」
ぐうぅぅぅ、と
突然敦の腹が鳴いた。その音に敦を説得していたAは銅像のように固まる。男の声も何時の間にか止まっていた。
「……ぁ」
敦とAはゆっくりと男の方に顔を向けた。
2人共ーー特にAが絶望で瞳を満たして死んだ魚の目をしている。
「ーーーー」
Aは心臓を五月蝿い程に鳴らして男の口からどんな言葉を紡がれるのか待っていた。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時