十八話/気づいた時にはもう遅い ページ18
「虎探しを手伝ってくれないかな」
満面の笑みで奇想天外な言葉を口にする太宰。
ーー驚き、不安、焦り。
各々がそれぞれの反応を示す中、最初に声を上げたのは、
「い、いい嫌ですよ!それってつまり『餌』じゃないですか!誰がそんな」
不安の顔、敦が立ち上がり抗議の声を上げる。
その反応に太宰は待ってましたとばかりに 「報酬出るよ」と魔法の言葉を唱えた。
見事魔法にかけられた敦はピタリと動きを止める。
「ーーぁ」
そんな敦に目もくれず、Aは冷や汗を浮かべていた。
外套の隙間から風が入ってきて体が急速に冷たくなっていく。それなのに、頭だけは時間が増すにつれて熱くなっていくのをAは感じていた。
特に口を滑らせたりはしていないし可笑しな素振りだって見せていない筈だ。
「ーーーー」
Aが恐る恐る太宰に目をやれば、例の有無を云わさない笑顔を向けられた。笑っているのに瞳は何処までも冷たい。何より、此方を見透かしてくるような瞳に鳥肌が立った。
苦手な
Aは何も云わずに太宰から目を逸らした。
そんなAに太宰は「つれないなぁ」と肩を竦めると、何時の間に書いたのかメモを取り出した。
「国木田君は社に戻ってこの紙を社長に」
「おい。三人で捕まえる気か?まずは情報の裏をとって」
「いいから」
太宰の表情から何かを感じ取ったのか、国木田はそれ以上は口を挟まずに渋々とメモを受け取った。
「ち、ちなみに報酬はいかほど?」
「敦君……」
手を擦り合わせて尋ねる敦にAは若干呆れたような視線を向ける。そんな可哀想な少年に太宰は「こんくらい」と、報酬が書かれているであろう紙を見せた。
Aからは見えないが、敦の表情からして相当な額なのだろう。唯、残念なことにAは敦程金に困ってはいない。
適当な理由を付けて一旦此処から出よう、と口を開こうとする。
「唯ねぇ、Aちゃんも着いてきてくれないと報酬は払えないなぁ。ほら、国木田君を吹っ飛ばす程のAちゃんの怪力……!!虎を捕まえる為にはあれが必要不可欠なのだよ」
太宰は意地悪そうな瞳にAを映し乍ら身振り手振り交えて云った。取って付けたような発言に国木田は眉をひそめるが特に何も云わない。
一方、未だ魔法の持続効果が解け切れていない敦は物凄い勢いでAの方を振り向いた。目が光っていて怖い。
「敦く、あの、私」
「Aちゃん……」
「ひっ……」
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時