十話/ 無理解 ページ10
気持ち悪かった。
頭が酷く痛んで割れてしまいそうだった。
いっそ死んだ方が楽なのでは、とさえ思った。
「ーーーー」
そんなAの状態にもお構い無しに沢山の足音が近づいてくる。
足音が頭の中で何度も反響して、木霊して、胸が、頭が苦しくなった。
「ーーう゛、ぇ…っ」
突然嘔吐感が押し寄せてきてなんの躊躇いもなく胃液をぶちまける。
2日間何も口にしていなかった為、少量の胃液だけで済んだのは不幸中の幸いだったと今では思う。
それから、状況を確認しようと揺れる頭を何とか持ち上げて当たりを見回す、と、
「ーー?」
真っ暗で何も見えない。そこで気づいた。目を開くのを忘れていたと。
Aは重い瞼を持ち上げた。
ーー最初に瞳に映ったのは割れた角灯だった。
「ーーぇ」
頭が急速に冷えていくのを感じる。
Aは角灯から視線を逸らすように更に奥に目をやった。
「ーーーー」
そこには凄い高さだった筈の本棚が倒れ、並べられていた本が乱雑に散らばっていた。
ーーそこで、突然強く肩を掴まれた。
「ひっ…」
恐る恐る振り返る。
Aの肩を掴んだのは職員だった。
「ーー!!!」
職員は何を指差して、恐怖と驚きと憤怒とが入り交じった複雑な表情で何かを叫んでいる。
Aはその職員の指に導かれるかの様に自分の右手に目をやった。
「あ、ぇ?」
目の前の光景が受け入れられなかった。
Aの右手は動物、猫、虎、だろうか。兎に角、動物のそれになっていた。
頭が冷えていく代わりに胸の辺りが急速に熱くなっていき、もう一度嘔吐感が押し寄せてくる。
「ん…う」
だが、今度はそれに従わずすんでのところで逆流してくる液体を飲み込む。
それからもう一度右手を見ると、
矢張り変わらずAの手は動物のそれになっていた。
分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない
無理解が脳に押し寄せてくる。
職員に体を揺さぶられるが、又しても何を叫んでいるのか分からない。
「ーーぅ」
意識が混濁する。未だ体を揺さぶられているが何も、分からない。
思考を放棄して瞼を閉じる。何も考えられらない。
ーー何も、分からない。何も、知らなかった。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時