57話 ページ10
紫音と藤次が夢マイクをつけると、周りの景色が変わっていく。
綺麗なドレスに身を包んだ紫音は、藤次と何かを話すと、急に腕を掴み出した。
(…?何だ?何か…不穏な雰囲気だ。)
何が起こっているのかはわからない。
しかし、紫音に腕を掴まれた藤次は目を閉じうなされだす。
「何が…起こってるんだ?」
「…………ぅ…。」
「孝臣…っ!」
先程よりさらに気分が悪そうな孝臣を見て、Aは焦り出す。
その時、白黒に景色が歪みだして、心に嫌な感覚が流れ込む。
(何だ…これ!?気持ち…悪い…。)
「俺…も、う……限界……っ…ぇ。」
「孝臣…!!?」
孝臣は口元を押さえ、その場に膝をつき上体を深く折り曲げた。
「え!?孝臣君!?」
「わっ!?ちょっ、大丈夫かよ!?」
「孝臣ぃ!!」
「う……ぐ……っ、また……ッ。」
「うわあああ!ちょ、袋ッ!ビニール袋!!」
千里がそう叫ぶと、はらはらと大量の袋が降ってくる。
Aはその中の1枚を素早く掴み取り、孝臣の背中をさすりながら口元へ持っていく。
「…ッ、感謝する千里…!!」
「え…!?Aちゃんが俺にお礼を…じゃなくて、大丈夫!?獅子丸…ッ。」
「うぅ……っ。」
「そっか、夢の中だからそうやって出せるのね…!あ、後ほかにお水とか出せないかしら…!!」
雫が水を具現化しようとしていると、桐谷が近づく。
「夢だから覚めるのが一番だ。夢ライブは中止にするからとっととログアウトしろ。」
「…っ!そうか、孝臣!できそう…?」
「うっ…。」
孝臣の体がスッと消えていく。
「!!…よし、Aも戻ろう!」
夢からうまくログアウトすることができたAは、すぐさま孝臣を保健室まで連れて行った。
・
・
「夢酔い?」
「あぁ、獅子丸がダウンした原因は間違いなく夢酔いだ。」
桐谷の説明によると、酒や車で酔うように夢の中でも体調を崩しやすい者もいるようだ。
さらに今回のように悪夢になっていると、夢酔いが起きやすいとのこと。
付き添いに来ていた千里達は、ぐったりと眠る孝臣の顔を心配そうに覗き込む。
「うっ…うぅ…孝臣ぃ…。」
Aは泣きながら孝臣の額に冷えピッタンを貼る。
「ほら、ちょっと体調崩してるだけだからそんな泣くな。とりあえずオリエンは終わりだ。部屋戻って歯磨きしてとっとと寝ろ。」
千里達が大人しく保健室を出る中、Aだけは頑なに孝臣のベッドから離れようとしなかった。
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月18日 15時