95話 ページ50
「キャンプ……孝臣とキャンプ…。」
雫が落ち込んでいるのとは裏腹に、Aは静かに目を輝かせていた。
「へぇ、僕カンペッジオって初めてなの。日本のモンテは自然が美しいって聞いてたから楽しみ!」
「カンペ…?モンテ…?」
「キャンプと山のことなの。」
「なるほど。」
「ふむ、しかし先生。キャンプということはなかなかに不自由な生活を送ることになると思うのだが、使用人達の手配は…。」
「針宮、お前らだけでっつったろ?使用人なんか呼んだら親睦旅行の意味がない。」
「で、ですがそうなると食事などの準備は…。」
「それをお前らだけで協力して乗り切るのが、今回の目標だ。」
「え…。」
藤次が戸惑うのをよそに、桐谷はニヤリと笑う。
「不自由な生活環境の中でこそ互いに協力し合い、思いやりの心が生まれ、絆が育まれる。君達には今回、そんな有意義な時間を過ごしてほしいんだ。…って、理事長が言ってたぞ。」
「はい先生!!スマホは使えますか!?電波とか!」
「お、いい質問だな新兎。今回は電波の届かない所に行くつもりだ。ゲームしてコテージに閉じこもるのも、何でもすぐ検索してネットに頼ろうとするのも禁止だそうだ。」
「そんなぁ!?」
「なっ…!?スマホ使えねぇとかマジかよ!?」
千里と孝臣がショックを受けるのを見て、Aは立ち上がる。
「おい桐谷!孝臣が困ってる。今すぐ電波の届く所に場所を変更しろ!」
「落ち着け豹華。考えてもみろ、ネットが使えないってことはどういうことかわかるか?」
「あぁ?」
桐谷は軽く手招きをすると、Aに耳打ちをする。
「…獅子丸はスマホに頼ることができない。そうなるとお前が頼りになるんだ。」
「!!」
「ネット環境が整ってないそんな状況だからこそ、お前の本領発揮なんじゃないのか?」
するとAは誇らしげな表情で孝臣を見つめる。
「孝臣大丈夫!Aに任せて!!」
「何がだよ…。」
「いやぁ、扱いやすくていいなぁこいつは。」
「お前何吹き込んだんだ…。」
「何でもいいだろ。とにかく、出発は明日の朝になるから今日の内に準備しとけよ。」
「「「「明日!?」」」」
桐谷の言葉にみんな驚く。
「あ、ざっくりスケジュールは今から配るプリントに書いてあるから目通しとけー。……面倒臭いな、おい学級委員長、これ配っとけ。」
「え!?は、はい…お任せください!」
「楽しみだなぁ、孝臣とキャンプ♪」
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月18日 15時