82話 ページ35
「あ、出てきた。おかえり〜！」
「ハァ…やっと出れた…。」
「あぁあぁぁ、怖かったよ〜！！」
「……。」
お化け屋敷から出てきたA達に、雫は手を振る。
その後ろでは、孝臣が眉間にしわを寄せ睨んでいた。
「つか、お前いつまで人の腕掴んでんだよ！！離れろよ！！」
「だってまだ体震えてるんだも〜ん！！つかAちゃんかっこよすぎ！！俺一生ついてく〜！！」
「ついてくんな気持ち悪ぃ！！…あっ、孝臣！！…っ？」
「え…？」
孝臣は無言で近づくと、Aと千里を引き剥がした。
そのままAの手を取ると、彼はスタスタと歩いていく。
「へ？え？！え！！？えぇ！？！！？」
「…………。」
無言で去って行く孝臣をポカンと見つめていた千里に、雫は声をかける。
「千里君、震え落ち着いたら私と周りましょうか。多分あれ嫉妬よ。」
「え？う…うん………えぇ！？嫉妬！？あの獅子丸が！？」
「今日貴方とAが仲良さそうにしてるの見て、何度も機嫌悪くなってたもの。」
「あいつ…嫉妬とかするんだ…。」
「本人自覚症状あんま無しだけどね。今も無自覚で連れ去ってったでしょ。」
「え！？今の無自覚！？怖…。」
「ま、とにかくその内また合流するでしょ。今は私と周りましょ。」
「ほえ〜、了解〜。」
その頃、Aと孝臣は何故か2人で観覧車に乗っていた。
(…！？なんか勢いで連れてきちまったけど何で観覧車選んだ俺！？つかそもそも何してんだ！？)
「お〜！高いねぇ。A達の家見えたりするかな？」
「見えるわけねぇだろ馬鹿。」
「そっか〜、残念！！」
孝臣が悩んでいるとはつゆ知らず、Aは無邪気に観覧車を楽しんでいた。
「それにしてもびっくりしたよ〜！孝臣そんな観覧車乗りたかったの？」
「は？いや別に……いや、そう…そうだな。乗りたかったんじゃねぇの。」
「そっか！！楽しいね！観覧車！」
「…………。」
孝臣ははしゃぐAの右腕を見つめる。
先程まで千里が掴んでいたため、袖には服のシワが残っていた。
「…おい。その、楽しかったのかよ。お化け屋敷は。」
「え？うん！殺人鬼ラビットから逃げるのワクワクして結構楽しかったかな！けど千里の奴がずっと泣きながら腕にしがみついてきてさ…大変だったよ。」
「へぇ…。」
孝臣はそう言うとAの右腕を掴むようにして引っ張った。
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作者名：茶虎 | 作成日時：2019年11月18日 15時
