61話 ページ14
「すっかり遅くなっちゃった!孝臣、冷蔵庫に入れておいたお粥の残り…食べたかな?」
Aが急いで孝臣の部屋に戻ると、部屋では千里が何やらゴミ箱を漁っていた。
「ゴミの分別は大事〜♪紙くずは?燃える〜♪…あ、Aちゃん!おかえり〜!」
Aは変な歌…と呟き、冷めた目で千里を見つめながら孝臣のベッドに向かう。
「遅くなってごめんね孝臣!体調は大丈夫そう…?」
「あぁ、だいぶ楽にはなった。」
「お昼食べた?」
「あーあの残ってたやつ、チンして食った。」
「そっか、それならよかった。ゼリーとか買っといたから、また食べたい時に食べてね!」
孝臣はサンキュ、と言うと再び目を閉じる。
千里は1階で変わらず変な歌を歌いながらゴミの分別をしていた。
その時、彼は何かを叫んで2階に駆け上がってくる。
「おい、体調良くないとこ悪いけど、夢マスクゴミ箱に入ってたぞ。ちゃんと管理しろよ。」
「!それ…。」
Aが驚いていると、孝臣は薄っすらと目を開けて答える。
「ア…?何拾ってきてんだよてめぇ。それは捨てたんだよ。」
「捨てたっ!?何でっ!?」
「知るかよ。俺はもう一生あのクソシステムにはログインしねぇ。」
「……。」
千里はその言葉を聞き焦り出す。
「じゃあ俺のペアはどうなんの?退学にだってなるかもしれない…。首席はどうなる!?」
「うるせー。だるいから消えろ。」
「……。」
Aはその様子を珍しく黙って見つめる。
「…お前何で東雲の特進に来たんだよ?」
「いいから寝かせろって。」
「何でそんなやる気ないの?首席狙ってないのかよ。」
「るせぇな狙ってるに決まってるだろ。」
「じゃあ何で夢マスク捨てたり…。」
「気持ち悪ぃんだよあそこが!!!」
「……っ。」
孝臣の言葉にAはハッとする。
「人間の心ん中具現化させるなんて考えた奴狂ってんだろ。」
「…確かに。」
「ちょ!Aちゃんまで!」
人間なんて欠陥だらけの生き物だ。
ヘラヘラとした仮面を被って、嘘で塗り固めた友情を築き上げる。
そうして崩れ去った時に現れる歪みきった本性。
そういったものが大嫌いだったAは、物心つく頃からずっと一人でいた。
そんな奴らと一緒にいるくらいなら、一人の方がマシだ…と。
(そんな人間の心の中を覗き見て楽しむなんて悪趣味すぎる…。)
Aがそんなことを考えている間にも、孝臣と千里の言い合いはヒートアップしていた。
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月18日 15時