58話 ページ11
桐谷に諦められたAは、いつの間にか孝臣のベッドに頭だけ突っ伏すようにして寝ていた。
目が覚めた孝臣は部屋に戻るため体を起こす。
「……っ。」
孝臣は自由が効かない右手に気がつく。
それは祈るようにして握られたAの手のせいだった。
「…俺は病気かっての。…ったく。」
孝臣はそっと手を離すと、Aを起こす。
「おい、起きろ。部屋戻るぞ。」
「……ん…………ハッ…!!孝臣…!?大丈夫!?」
「まだ気持ち悪ぃけど、なんとかな。」
「よかった…!!あ、お水いる!?今持ってくるね!!」
Aは急いで水を注いでくると、孝臣に手渡した。
孝臣は水を受け取ると、コップを持っていない方の手でそっとAの頰に触れる。
「…泣き後。お前また泣いたのか。」
「!?!!?!?えと…、孝臣が心配で…っ!!」
「…なぁ、お前って俺のこと以外で泣いたりすんの?」
「へ…?別に泣かないけど…。泣くようなことないし。」
孝臣は小さく、だよな…と呟き水を飲み干す。
「?」
「まぁいい。とりあえず部屋戻るぞ。」
「あ、うん!送ってくね!」
Aは孝臣を部屋まで送ると、自室に戻った。
寝支度を終えベッドに潜り込むと、スマホで気分が悪い時の対処法を調べだす。
「明日もきっとまだ体調良くないだろうし、お粥とか作って持って行こう…!」
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次の日の朝、孝臣の元へお粥を持って行ったAはそのままベッドの側に付き添っていた。
「お粥、食べれたみたいでよかった…。他欲しいのある?」
「いや、特にねぇ。ありがとな。」
「うん!今からどうする?少し眠る…?」
「あぁ、もっかいちょっと寝るわ。」
「わかった。じゃあ替えの冷えピッタンだけ持ってくるね。おやすみ。」
「おう、悪いな。」
冷蔵庫から取り出した冷えピッタンを眠ろうとする孝臣の額に貼ると、Aは食器を片付けようとする。
「いいなぁー、獅子丸はこんな美少女に尽くしてもらえてー。」
「ふん、そんなに言うならお前もその辺の女に尽くしてもらえばいいだろ。」
ソファでくつろぐ千里にAは冷めた目で答える。
「そんな人いたらこんな風に言ってないってー。」
「じゃあお前に魅力がないんだな。残念。」
「Aちゃんもっと言葉選ぼう!?」
冷たく言い放つと、Aはスタスタと部屋を出て行く。
食器を洗い終えたAは、ゼリーや薬を買うために薬局へと出かけて行った。
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月18日 15時