9話 ページ10
「おっほ、よく見たらめちゃくちゃ可愛いじゃねェか。お嬢ちゃんが俺と遊んでくれるっつーなら、今回は見逃してやってもいいぜェ?」
「おいてめぇ…。」
「いいよ、遊んでやるよ。ただしこういう遊びだけどな。」
Aはそう言うと、男の腕を捻り上げた。
「いっ、いててててててて!!てめェゴラガキィ!!何しやがんだ!!」
「あ?てめぇこそ気安く孝臣に触れようとしてんじゃねぇよ潰すぞ。だいたい肩ぶつかった落とし前くらいつけたらどうなんだ、あぁ?」
「ガキが、調子に乗りやがってェ!!」
男はAの腕を振りほどき殴りかかろうとする。
が、その瞬間、Aは松葉杖を支えにして、怪我をしていない方の足でそいつの顎を思いっきり蹴り上げた。
「カッ…ハッ…!!」
「一生そこで伸びてろクソ野郎。」
「……。」
呆然とする孝臣の元へ松葉杖をつきながら駆け寄ると、Aは心配そうに彼を見つめた。
「孝臣!!怪我はない!?」
「……あ。あぁ、お陰様で…。」
「それはよかったぁ!!」
にぱぁっと笑顔になるAを見ると、先程までの彼女と本当に同一人物なのか疑いそうになる。
「お前の喧嘩姿、ちゃんと見るの初めてだけど…本当に強いんだな…。」
「えへへ。孝臣のことは、Aがちゃんと守ってあげるからね!」
「……そりゃどうも。」
もう諦めの境地にいた孝臣は反論することをやめた。
「…こいつもしかしてとんでもねぇ狂犬なんじゃ…。」
「ん?何か言った?」
「いや、何でもねぇ。」
「そっか!それよりどこ行こうか!孝臣の好きなとこ行こうよ!!」
「別にお前の行きたいとこでもいいけど。」
Aは少し眉を下げて答える。
「A、今まで友達とかいなかったから誰かとこうやって出掛けたことないんだ。だから流行りのお店も美味しいご飯屋も詳しくなくて…。」
Aのこういう時折見せる表情を見ると孝臣は思う。
あんな喧嘩することしか能がない一匹狼だけど、本当はどこか寂しい思いをしてきたのだろうか、と。
「A、腹減ってねぇか?」
「腹減ってる!」
「よし、じゃあ付いて来い。近くに行きつけの美味いハンバーガー屋があるんだ。」
「わぁ!ハンバーガー!?家で作ることもないし、初めて食べる!!楽しみ!!」
「なっ!?初めて…!?マジかよ…。お前それは人生損してるぜ。あの味は知っとけ。」
そうして孝臣は謎のスイッチが入り、その日はAを連れ回しまくった。
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うりぼー - 絵が上手すぎてびっくりしました。主人公めちゃかわ (2021年2月26日 2時) (レス) id: 8c3f058671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月13日 15時