25話 ページ26
入学式当日の早朝、Aは朝食を祖母と食べながら話していた。
「あぁ、今日でAのご飯が食べれなくなると思うと寂しいねぇ。」
「Aもばぁばのご飯食べたいし、時々戻ったりするから。」
「そうかい。それは嬉しいねぇ。」
「うん!」
「それにしても、立派な高校行くんだろう?Aが高校に行きたいって言った時にゃたまげたもんだよ。あんなに嫌がってたのに。」
「一緒に行きたいと思える人ができたからだよ。」
「たくろうくんには感謝だねぇ。」
「孝臣ね、ばぁば…。」
食べ終わった食器を片付け、荷物の最終確認などを済ませたAは玄関で祖母に挨拶をする。
「それじゃ行ってくるね。何かあったらすぐにメールするんだよ!電話でもいいけど。」
「大丈夫。心配なさんな。ところで、Aはばぁば以外とメールしたことあんのかい?」
「え?」
「家で携帯触ることもほとんどないだろう?音楽は聴いとるかね。」
「まぁ…友達いないし。」
「ほれ、新しい高校では沢山友達作るんだよ。今の若い子はいいよ。こんな簡単に誰かと繋がれるんだからねぇ。」
「いいよ別に。Aは孝臣がいればそれでいいし。」
「そんで孝臣くんとはメールしとるのかね?」
Aはキョトンとする。
「え…?いや、いつも会ってるから別にいいかと思って…。」
「何でね。今日だって待ち合わせの連絡くらいしとらんの?」
「え、してない。迎えに行けばいいと思って…。」
「そういう時に使うんだよ。」
祖母の言葉にAはショックを受ける。
「…そ、そういうものか。」
「そうだよ。だいたい会えん時もあったりするだろう?そういう時にあると便利だよぉ。」
「た、確かに…会えなくても孝臣と会話ができる…!盲点だった!!」
直ちに連絡先を聞かないと!と意気込むAを見て祖母は笑う。
「ほっほっ、じゃあ元気でね。孝臣くんにお友達の作り方も教えてもらうんだよ。行ってらっしゃい。」
「だから友達はいらないって!ま、でも行ってきます!また向こう着いて落ち着いたらメールするね!」
そう言って走り出したAは迷いなく孝臣の家へ向かう。
散々通ったこの道ともしばらくお別れか、と思うと少し切なくなる。
「でも、これからは孝臣ともっと一緒にいれるから楽しみだな♪」
イヤホンをつけ、Uribosの曲を流し始めたAは鼻歌を歌いながら歩く。
風が吹き、ライトグリーンの髪にルビーのアクセントがそっと揺らめいていた。
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うりぼー - 絵が上手すぎてびっくりしました。主人公めちゃかわ (2021年2月26日 2時) (レス) id: 8c3f058671 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茶虎 | 作成日時:2019年11月13日 15時