004 ページ4
｢俺の家…っていうか、寮がこの近くだから来れば？あんたの格好、とても見てられないし｣
(格好…)
彼と会えたことが嬉しくて、自分が学校から駅まで濡れながら走ってきたことを忘れていた。
｢すみません、お見苦しいものを…｣
｢別に、｣
彼はもう一言、何か言おうとしていた様だったが私を見て飲み込んだらしい。
それから、特に言葉を交わすことはなく、私は彼に連れられて大きな建物の前に立っていた。
｢ちょっと待ってて、タオル持ってくるから｣
｢ありがとうございます｣
玄関に入ると、彼は急いで奥に消えていった。
(さむい、)
そう思いながら見渡した明るい寮は、彼以外にも人の気配がして自分の家にはない温かさがある。
｢お待たせ｣
彼は、タオルと1セットのルームウェアを持っていた。
｢寒いんでしょ？制服も乾かさなきゃだし、シャワー浴びてきなよ｣
｢そんな、ご迷惑をかける訳には…｣
｢そんな格好で帰って、変な奴に…いや、風邪でもひかれたら、こっちだって寝覚め悪いし｣
そう言って彼はタオルを私に押し付けた。
(寒いし、これ以上断るのは逆に失礼だよね？)
そう自分に言い聞かせて、彼に感謝を伝えた。
｢あと、先に謝っておく｣
｢なんでしょう？｣
｢ここ、男子寮なんだよね。監督は一応、女だけど｣
｢あぁ、平気です！ありがとうございます｣
｢そ、じゃあついてきて｣
｢はい｣
浴室に着くと、手際よく説明を受けて
扉の中に押し込まれた。
｢何かあっても嫌だから、俺はここにいる。なんかあったら声掛けて｣
私は頷くと、そくささと浴室に向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たんさん | 作成日時：2020年6月13日 23時
