福富さんと自転車競技部３【弱虫ペダル】 (ページ1)

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新開隼人 side

キスしてもいいかい？なんて聞いた俺にAはきっと『バカじゃないの？！』なんて怒ると思った。
それなのに『一回だけ』なんて可愛いことを言う。

Aは俺に甘いってことは知ってるけど。

中学の頃の誤解も溶けたことから、ここ最近は態度も柔らかく、普通に話してくれるようになった。

俺はそれが嬉しくて、浮かれていたりする。
前みたいな関係になれるんじゃないかって、少し邪な考えをするくらいに。

目の前のAは顔を赤くしていて
そっと頬に触れれば緊張してるのか微かに震えている。
腰を引き寄せれば、驚いて見上げる瞳が揺れた。
顔を寄せればぎゅっと目を閉じる。

インハイで優勝したら『付き合ってくれ』って言うつもりだ。
ここでキスしてしまうのは順番的には逆か？

じっと見すぎたせいか『…隼人君？』なんて疑問符が飛んで来てしまった。

「いやぁ、可愛いなぁって」

『…』

赤らめていた顔は色が引き、いつもの顔になっている。
表情はあまり変わらないけどこれは明らかに機嫌を損ねてしまったようだ。

『…みんな待ってるから行くからね。』

「A！まだキスしてないんだけどな…？」

低いトーンの声からもわかる。
腕から抜けたAは背を向けて今度こそ歩き始めてしまう。

追い掛け、横に並べば冷ややかな横目で見られてるぜ…

「…Aの緊張した顔が可愛くて、目が離せなくてな。」

『緊張してないし、そう言う説明やめて。』

「はは、怒ってる顔も可愛いけどな。」

バキュンと指をさせば、もうこちらなんて見てくれない。
困ったなぁと頭をかきつつ苦笑いを浮かべることしか出来なくなっちまった。

「…もしかして、Aも俺とキス、したかったのかい？」

『…～っ！
隼人君ってほんっと昔からデリカシーないよね。』

浴衣の裾を軽く持ち上げ、Aは小走りで行ってしまった。
デリカシーない、か。

もしかして本当にキスしたかったのか？

俺に甘いけど、もしかしたらAは…

「…やっばいな…」

その場にしゃがみ、にやけてんなよ！ってよく靖友に言われるけど自覚できるくらいににやけているのが自分でもわかる。

こんな顔で皆のところに行ったらAは更に怒ってしまうかもな。

「…どうしたんスか？新開さん」

「いや、なんでもない。」

不思議そうに声をかけて来た銅橋を先に行かせ俺もみんなのもとへと。