執事の思い ページ19
V「…………何だと？」
陽気に笑う普段とは違う咎めるような視線で、Mr.VはAを見据える。
Aはヴェールの手を優しく包み、そっと自分から離させた。
心配そうな彼女の視線に気づきながらも、Aは、Mr.V、そして前にいるリクルーター達を真っ直ぐに見て、口を開いた。
A「皆さん、ミスターからも聞いたと思います。
私は、人間さんの黒い感情が魔力を持ったことによって生まれた身です」
A「ふとした時に私は思うのです。
『私』という存在は、
この世界に存在していいものなのかと」
彼は自分の心臓の辺り視線をやり、軽く手を置いた。Aは静かに、何処か苦しそうに言葉を発していく。
A「幸せそうな、楽しそうな人間さん達を見ると、頭の中にいくつもの声が響くのです。
私を作り出した、黒い感情の声が。
その声達が人間さん達と触れ合う度に、『殺せ』『壊してしまえ』と呟き、私の身体を
彼の手に強く握られた服に、皺がよる。
目線の先を床にした彼の眉間も同様だった。
A「それを抑え込むため、私の身体に負担がかかるのは良いのです。
でも、いつか抑えが効かず、皆さんや人間さん達を傷つけるかもしれないと思うと、怖くて堪らないのです」
心臓の上にあった右手を、こめかみに持っていく。今度は、艶のある髪をくしゃりと掴んだ。
A「それでも、ここにいる皆さんとの日々、人間さん達とのふれあいは、すごく、すごく、楽しくて…！」
床に打ち付けるように、Aは言葉を発していく。言葉を発する度、彼の声は震えていった。
生まれて初めて言う自分の思いが、主人の心に届くように。
V「…例え自分が苦しくても、それでも、ここに残りたいというのか」
Mr.Vが、彼の覚悟を見定める。
ひとつ頷き唇を噛み締めたあと、Aが返事をした。
A「…申し訳ありませんミスター。
私の、子供のような我儘をどうかお許しください。
最後の日最後の時まで、私は、
皆さんと一緒にいたいんです…！」
絞り出した声と共に、天色の瞳から、彼の感情が溢れ出す。
彼を作り出すものとはかけ離れた、純粋な、美しい大粒の涙。
ごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら、幼子のように泣く彼の姿を皆は呆然と見ていた。
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かしおれ(プロフ) - リンネさん» リンネさん初めまして。閲覧ありがとうございます。その言葉ひとつがとても嬉しいです。お話はもう少し続くので、よければお付き合い下さいね。 (2019年1月8日 22時) (
レス) id: 8439607bfd (このIDを非表示/違反報告)
リンネ - 手下好きなので嬉しいです！凄く好きなタイプの話だったので続きが気になります！頑張って下さい (2019年1月7日 17時) (レス) id: 679ef415fd (このIDを非表示/違反報告)
まるごと林檎。 - かしおれさん» おお…！返信が来るとは…！！ありがとうございましっ！これからも見させていただきます！！ (2018年12月21日 0時) (レス) id: d45bba4278 (このIDを非表示/違反報告)
かしおれ(プロフ) - まるごと林檎。さん» まるごと林檎さん初めまして。閲覧ありがとうございます。その言葉が励みになります。もう少しお話は続くので、またよかったら見ていってくださいね。 (2018年12月20日 23時) (レス) id: 8439607bfd (このIDを非表示/違反報告)
まるごと林檎。 - 今まで見たものとは違い、全く新しいお話だったので最後まで読み進めちゃいました！これからも頑張ってください！ (2018年12月19日 14時) (レス) id: d45bba4278 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かしおれ | 作成日時：2018年12月11日 22時
