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京本side
んふ、ラッキー♪
鍵開けっぱでも怒られないし、
可愛いわんころもちみたいに飛びついてきちゃって。
でも基本、俺らは喧嘩したことがない。
〈倦怠期〉なんてものも俺らの辞典には載ってないし、
寧ろ、その辞典には〈トマト〉と〈北斗〉と〈俺〉しか載ってないかも。
「ねえ、大我。早く進んでって！
ミネストローネが冷めちゃうよォ！」
そう言って俺の背中を突っついてくる北斗。
どうやら俺が道を塞いでしまっていたらしい。
「ミネストローネかぁ！
俺、ミネストローネに入ってる生トマトが好きなんだよねぇ」
「あっ、はっ、あはははは笑」
「なに北斗、挙動不審だよ？
もしかしてトマト入れてないとか──？」
俺がそう言うと、おでこを分かりやすく掻く北斗。
そしてそっぽを向いて、口を開いた。
「いや、なんでもない！さ、冷めちゃう冷めちゃう！」
「トマト入ってないと関係が──」
「──冷めちゃうの……？」
「ふふ、冗談だってば、早く食べいこう」
「うんっ！」
﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌
「でさぁ……新居の話なんだけど」
ミネストローネの赤を口の端につけて、
少し気まずそうに口を開いた北斗。
先程席について、黙ってパンを食べ終わったところだ。
俺は頷きつつも氷の入った水をゴクリと飲んだ。
「やっぱ、表札は《松村》だろ。
現に彼氏だし？夫予定だし？」
「んふっ？そこは《京本》だってば！
北斗が彼氏ってどこ見て言ってるわけ？
北斗は料理上手いし、可愛いし、美人だし、
別に大人のアレコレだってしてないんだし、
勝手に決めないでくんない？」
「むぅ〜、もう新居は完成間近でしょ？
いい加減折れてくださいよぉ、大我さーん？」
「だぁっ！
言っとくけどね、その甘えん坊ボイスで彼氏は有り得ないよ？
やっぱりそこは大黒柱の《京本》でしょ？」
「いんや、それはない！
このごろイクメンって言葉もよく聞くでしょうよ？
でもあなたはアートだの歌だの、
立派に芸能系統の仕事に就いた美人さんだろう？
こりゃもう、彼女だね。
素敵で自立した彼女……ってことで《松村》に決定！」
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作者名：おぞーに | 作成日時：2022年6月7日 20時
