13話 勝己side ページ13
｢う……ん」
くすぐったかったのか、不服そうに眉をひそめ、Aが寝返りをうってしまう。
勝己は火傷したように勢いよく手を引っ込め、バッと距離をとった。
バクバクと鳴る自分の心臓の音でAが目を覚まさないか心配だった。
どうしてここまで自分の心が乱れているのか分からない。
勝己はこの感情をどこにぶつけていいか分からず、｢クソッ｣と毒づく。思ったよりも大きく部屋に響いたその声で、Aのまぶたが動いた。
そのまま何回かパチパチと瞬き、その視線がすぐ近くにいた勝己を捉える。
｢ん、………かっ、ちゃん……？｣
Aは寝起きの少し掠れた声で勝己の名を呼び、ふんわりと微笑んだ。
勝己はヒュッと息を呑む。久しぶりに見た、自分に向けられた笑みだった。
何度か瞬きすると頭がようやく覚醒したのか、勝己をしっかりと認識し顔を青くした。
｢！かっちゃん！？あ、え、ごめんね、勝手に寝て…｣
先程の笑顔とは打って変わり、勝己が怒っていないかと恐る恐る見上げてくる視線が無性に苛立って大きく舌打ちをする。
そんな勝己を見てやっぱり怒ってると思ったAは、慌てて何か別の話題を探した。
｢その、かっちゃん早乙女さん知ってる…？美少女で有名な｣
｢は？知らねぇ｣
｢…あのね、その子がかっちゃんと１回でもいいから一緒に帰りたいんだって｣
勝己はAの意図が分からず怪訝な顔をした。
暫し思案し、出来のいい勝己の脳はすぐに結論にたどり着いた。
｢…そんなに俺と帰るの嫌なんか｣
思わずそうこぼしてしまい、ハッと口元を手でおおった。Aを伺えば、俯いていて気づいていない様子なのでひとまず安堵する。
Aは勝己のことを嫌っている。まして荷物をもたされてこき使われるなんて、一緒に帰ることも嫌に決まっている。
何を今更。勝己は自嘲した。
｢かっちゃん、無理そう…かな？｣
しかし、見上げてくるAの視線に期待や願望が混じっているを見つけ、勝己は目を見開く。
俺が、この誘いを断ることを期待している…？
そう見えたのはただの自分の願望なのかもしれない。ただ、この誘いに応えたときどんな表情をするのか気になった。
｢…帰ってやらなくもねぇ｣
｢やっぱそうだよね…って、え！？｣
｢文句あんのか｣
｢…早乙女さんと一緒に帰るの…？｣
捨てられたような瞳をするAに、言い知れぬ満足感を得た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 440人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琴音 - 率直に言おう 泣いた 心臓痛い 涙腺崩壊 私自信かっちゃん、めちゃくちゃ好きだからこれはヤバかったです。泣いたよマジで(逆ギレ)…うん。落ち着こ…うん。 とにかく！更新停止中って見てガーンってなりました。更新するの待ってます頑張ってください。 (2018年11月12日 23時) (
レス) id: 5ea2581f57 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - ヤバい泣いた (2018年8月6日 10時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
マリー・テレーズ - 続き、気になります(>_<) 早く更新復帰して下さい 楽しみにしてます (2018年4月9日 22時) (レス) id: 681c9fa44a (このIDを非表示/違反報告)
冬桜ノ夜??(プロフ) - ヤバいキュンキュンしすぎて心臓破裂しそう！ (2017年12月18日 20時) (レス) id: fede09adb9 (このIDを非表示/違反報告)
むぎちゃ(プロフ) - ねんさん» コメントありがとうございます！！個人的に片思いでこじらせてる展開が大好きで、趣味1000%で書いてる話なんですが、キュンキュンしてもらえたようでよかったです！(*^^*) (2017年12月3日 14時) (レス) id: 13d6972138 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎちゃ | 作成日時：2017年10月29日 19時
