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YG「気は済んだか?」
「はい…」
YG「なんで敬語?」
心臓がばくばくしてしばらくの間動けずにいた。
先生はそんな私を見てくすくすと笑うと、コーヒーの残りを飲み干して立ち上がる。
YG「先車乗ってるぞ」
はっとして時計を見ると、いつもならもうとっくに家を出ている時間。
私はともかく、先生が遅刻してしまったら大変だ。
かじりかけのトーストを慌てて口に詰め込んで、先生の後を追いかけた。
YG「今日は帰りも迎えに来れるから」
大学に到着すると、先生は後部座席から私の荷物を下ろしてくれながら言う。
私たちは同棲している訳ではない。
付き合い始めた頃、先生の負担になりたくないと思った私は、先生が当直だったり、手術を控えている日は、ここからそう遠くないところにある自分のアパートに帰るつもりでいた。
けれど先生は意外にも、1人にしておきたくないなんて言って、私が家に帰ると言うと不機嫌になる。
そんな日々を過ごしているうちに、私も先生が側にいない時間を無性に寂しいと思うようになってしまって、今では大学にいる間以外ほとんどの時間を先生の家で過ごすようになった。
「ありがとう先生。お仕事頑張ってね」
YG「あぁ、お前もな」
私を降ろすと、先生はひらひらと手を振りながら病院のほうへと再び車を走らせていく。
私はそれを見送りながら、次先生に会えるのは8時間後か、なんて、まだ別れたばかりなのにそんなことを思っていた。
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作者名:yuzu | 作成日時:2022年6月5日 21時