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YG「A!」
どのくらいの間そうしていたんだろう。
ふいに遠くのほうで名前を呼ばれたような気がして顔を上げると、目の前にひどく焦った様子のユンギ先生がいて、私の顔を覗き込んでいた。
YG「大丈夫か?」
「せんせ…っ」
顔を見た瞬間気持ちが緩んでしまって、みるみるうちに目に涙が溜まっていく。
YG「手どうした?切ったのか?」
「先生っ、血が、血が止まらないの…どうしようっ」
私は震える声で必死にそう返すけれど、全く質問の答えになっていない。
YG「落ち着け、大丈夫だから。俺の目見てゆっくり呼吸しろ」
言われた通り大きく息を吸って吐いてを繰り返すと、ようやく少し落ち着くことができた。
その間に先生はポケットからハンカチを取り出すと、
YG「少し痛いけど我慢な」
慣れた手つきで傷口に括りつけてくれる。
YG「すぐ止まるから。大丈夫大丈夫」
何度も大丈夫と繰り返しながら、隣に腰を下ろして背中をさすってくれる先生。
私はすっかり安心して身を委ねていたけれど、その手がぴたりと止まったかと思うと、もう片方の手が額に伸びてくる。
YG「お前熱もあるな。いつから?」
「…今朝、起きた時」
指を切ったことで気が動転して、熱があることなんてすっかり忘れてしまっていた。
おそるおそる答えると、先生は少し考え込むような顔になって、
YG「ごめん。お前が調子悪そうだって分かってたのに、出る前にちゃんと診てやればよかったな。1人で不安だっただろ」
そう言って少し苦しげに眉を寄せる。
「そんなっ、先生のせいじゃないっ」
体調が悪いことを隠していたことも、無理をして怪我をしたことも、全部私が悪いのに。
ユンギ先生に辛そうな顔をさせてしまったことに胸が痛んで、また泣きそうになってしまう。
YG「そんな顔するな。お前はなにも気にしなくていいから。…少し動かすから、じっとしてろよ」
「え?…きゃっ」
いつもより優しく頭を撫でられたあと、背中と太ももに先生の腕が回って、ふわりと体が浮き上がった。
YG「病院行こう。縫ったほうがいいかもしれないし、念の為検査もしたい。いいな?」
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作者名:yuzu | 作成日時:2022年6月5日 21時