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次から次へと溢れ出てくる血で床を汚してしまわないように慎重にリビングまで移動して、ソファに腰を下ろした。
傷口を強く押さえてみたり、手を高い位置に上げてみたりして止血しようとするけれど、なかなか止まる気配がなくて少し焦り始める。
「…っ」
毒々しいほどに赤い血を見ているうちに、嫌なことを思い出した。
病気が見つかる少し前、たしかこんな感じじゃなかったっけ。
いつできたのか分からない痣が身体のいたるところにできて、小さな怪我でもいつまでも血が止まらなかったり、治りが悪くなったり。
それから原因不明の微熱が何日も続いて…。
少しずつあの時の記憶が蘇ってきて、心臓がどくんと嫌な音をたてる。
「…違う」
そんな訳ない。
先月の検査だって異常はなくて、先生も順調だなって笑って言ってくれたんだから。
「違う違う」
自分に言い聞かせるように何度もそう呟くけれど、芽生えてしまった不安はどんどん膨らんで、胸が押しつぶされるように苦しくなる。
せっかく元気になって、ユンギ先生と一緒にいられるようになったのに。
またあの頃の生活に戻らなくちゃいけないなんて。
「嫌…やだ…」
込み上げてくる恐怖に、泣き出してしまいたくなるのを必死に堪えて俯く。
指先から滴り落ちる血が床を汚しても、もうどうしたらいいのか分からなかった。
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作者名:yuzu | 作成日時:2022年6月5日 21時