ゆるふわ毛玉本丸の日常 (ページ9)

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大和守安定の話ページ9

今でも大和守と加州は行動をともにすることが多い

多いというより、殆ど四六時中一緒にいる

出陣も遠征も一緒にしてくれるのは、恐らく毛玉の心遣いだろう

あの日、あの時、沖田総司が腰に差して行ったのは大和守安定ではなく加州清光だった

その記憶が今でも大和守を締め付ける

ただ帰りを待つだけの辛さも、変わり果てた姿で戻った相棒を見る辛さも、もう嫌だ

どうせ傷つくなら一緒に傷つきたい

笑うなら一緒に笑いたい

そんな大和守の心中を知ってか知らずか、毛玉は２人を離そうとしないのだ

｢清光は主の事どう思う？｣

縁側で陽を浴びながら尋ねる

｢さぁ？よくわかんないよねー、まず存在が謎だし｣

爪先を見ながら笑いを零す加州

｢考えるだけ無駄だと思うよ｣

｢それもそうだね｣

大和守も頷き、同じように息を吐いた

腰掛けていた２人は、示し合わせたかのように同時に立ち上がる

｢あ、清光も思った？｣

｢うん、そろそろおやつの時間だからね｣

遅くなると毛玉が呼びに来るだろう

主の手を煩わせない為にも、そろそろ皆の所へ行かなければ

前の主の事は、たぶん一生大和守の内に残る

沖田総司という偉大な存在を忘れるなんて到底不可能だ

それでも、今の主は他でもなくあの毛玉だと

自分でも気付かない間に納得していた

最初は、沖田総司以外に仕える事に抵抗があったのだ

新しい主に失礼だとわかってはいても、気持ちを変えるのは容易ではない

大和守が悩んでいると、皆分かっていた

分かっていて何もしなかった

これは大和守の問題であり、誰かが手を出して良いものではなかったからだ

程度は違えど皆同じように悩み、葛藤し、乗り越えてきた問題だった

今の主への想いと、前の主との記憶

｢僕は、ちゃんと前に進めてるのかな｣

人の姿を得て今の主に仕え、前進した気になっていた過去

その実、前の主に縛られて、ただその場で足踏みをしていただけの過去

忌まわしい、とは思わなかった

そういった過去の記憶も、自分を形作るひとつだと思えたから

｢きっと、大丈夫だよね｣

幾度となく繰り返してきた自問自答に、恐らく模範解答などない

模範解答など要らない

そう結論付ける事が出来たのも、今の主のお陰だ

｢安定早くー！置いてくよー｣

｢今行くー！｣