ゆるふわ毛玉本丸の日常 (ページ19)

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大倶利伽羅の話ページ19

｢馴れ合うつもりはない｣

｢俺一人で十分だ｣

大倶利伽羅は顕現早々、主たる毛玉を突き放した

毛玉が審神者となってまだ間もない頃に鍛刀でやってきた初の伊達勢である

そう、初めての

つまりは、間に立ってフォローしてくれる燭台切がまだいない

面白おかしく場を和ませてくれる鶴丸もいない。

今までの刀剣男士達は皆無条件に慕ってくれただけに、毛玉は困惑した

近侍であり鍛刀を手伝ってくれた陸奥の方へ勢い良く振り返ると、頭部の触角で大倶利伽羅を指さす

ガクガクとマナーモードに入ってしまった毛玉は無言でその大きな瞳にどこから湧いてくるのか涙を滲ませ始めた

毛玉本丸一のセコムもとい陸奥守吉行、激怒

｢のう大倶利伽羅、ちっくとえいか？｣

はっはっはと釣り上げげれた口元に穏やかさは見えず、毛玉は悟る

むつ、おこってる…、と

大倶利伽羅は知らない、陸奥守は滅多に怒りを露わにする事などないと

｢なんだ、｣と半歩近寄った大倶利伽羅の顎に衝撃が走った

無論、衝撃の正体は陸奥守の拳である

｢歯ぁ食いしばれ｣

言うのが遅い、至極今更である

既に沈む大倶利伽羅を絶対零度の瞳で見下ろす彼は、毛玉に関してのみ少々過激であった

元は刀剣といえど今は人間と同じ肉の器、顎が揺れれば脳が揺れる

陸奥守は的確に急所を狙った

勿論わざとだ

毛玉を泣かせる者は何人たりとも赦さない

げに恐ろしきはセコムなり

悲しきかな、大倶利伽羅は新入りであることを除いても毛玉本丸に馴染める気がしなくなった

大倶利伽羅という刀剣男士の性質から言えば何の変哲もない、ごく普通である筈の顕現時の台詞

それがまさか、こんな亀裂を生むと誰が予想しただろうか

孤独である

馴れ合いは煩わしく一人を好む大倶利伽羅だが、独りが好きなわけではない

疎外感というのはあまりよろしくない

しかし、不本意だが自分の非は理解しているし納得しているのだ