ゆるふわ毛玉本丸の日常 (ページ16)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:3,882 hit

鳴狐の話ページ16

｢ほいたら、本丸を案内するぜよ～｣

発言者は陸奥守だが、案内するのは毛玉だ

｢分からん事があったらその辺の者に聞き、ワシは万事屋に行ってくるきに｣

｢何か入り用ですかな？｣

｢今日はおきゃくじゃ！ほたえまわるぜよ～！｣

陸奥守は鼻息荒く出掛けていった

｢おきゃく、とは？｣

率直な疑問を毛玉に尋ねるが、口のない者に聞いてどうしようかと戸惑う狐

しかし心配ご無用

毛玉は筆談が得意なのだ

鳴狐の手を取り、先程のように文字をなぞっていく

｢え、ん、か、い？ほほう！今宵は宴ですか！｣

ぐっと親指、ではなく、右の触角を立てる毛玉だが、準備をするのは主に陸奥守と歌仙である

だというのにこのキメ顔

｢面白いお方ですなぁ｣

本体の青年も微笑み頷いている

当の毛玉はというと、心外だとでもばかりに憤慨している

成る程、本人は面白毛玉ではなく真っ当な毛玉のつもりらしい

毛玉に面白いも真っ当もあるのだろうか

まずは自身が人外である事に疑問を抱いた方が良さそううなものだ

言の葉を発しないままに、毛玉は粟田口の部屋や居間、浴場等々案内を進めていく

鳴狐はその後ろを足音静かについて行く

時々本丸内の男士達に遭遇し、挨拶を交わしては別れた

｢そういえば、主様も宴会に参加を？｣

言外に｢どうやって参加するのか｣と問う狐

何せ口がないのだから、飲み食いできないに違いない

｢そうだね、どうするの？｣

珍しく鳴狐も口を開く

対して毛玉はニヤリと目を細めた

口があれば三日月でも描いていただろう

｢舐めるな｣とでも言いたげな毛玉は、その場で変化して見せた

｢どや｣

と、効果音を口にしながら腰に手を当てる少女

｢……へぇ｣

開いた口が塞がらない狐と、目を丸くする鳴狐

｢きつね、宜しく｣

にへらっ

気の抜ける笑みを浮かべると、即座に毛玉姿へと戻った