+34《Blue Rose》 ページ35
君の隣にいるのはどうして僕じゃないんだ、どうして君の隣で笑えるのが僕じゃなくて、よりによって僕の兄なんだ。
嫉妬に駆られ、自分でも気が付かないうちにぎりりと奥歯をかみ締める僕だったけれど。
君が今二郎のそばで笑っている意味をすぐに理解できないほど、僕の脳内はお花畑ではなかった。
茉由から離れる術を見つけられぬまま、そいつの思うままの恋愛人形に成り果てて。
そんな薄汚れた僕の立場でも、君を手離したくないという自分の欲望のままに、僕は彼女を自分のそばに縛り付けた。
僕は、狡いやつだ。
彼女の優しさにつけ上がって、きっと自分の知らないうちに何度も彼女を傷つけた。
そのツケが今、僕に回ってきたというだけではないのか。
現状僕なんかよりずっと自分のことを大事にしてくれる二郎に、彼女は乗り換えたのかもしれない。
それにしても、聞いてないぞ。
二郎のやつ、よりにもよって、弟の好きな女になんてこと…っ！
.
僕のせいだと自分自身を責める一方で、彼女にも、二郎にも裏切られたような思いにもなる。少しでもそんなふうに感じている自分に、嫌悪を抱く。
考えれば考えるほどに、僕の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
こうなってしまった理由はわかるけれど、わかりたくない。
だって、僕らはそれだけ、お互いを想い合っていると。
僕はずっとそう、信じていたから。
「三郎くん」
甘い声が脳髄に響いて、僕はゆっくりとそちらを見下ろす。
.
そうだ。
この悪魔さえいなければ。
こいつさえ、いなければ。
すべて、うまくいくはずだった。
「…茉由」
「なぁに？」
「僕ら、前に話してたよね。薔薇の花言葉について」
突然なんの脈絡もない話をぶっ込んだ僕に、彼女は少し驚いたらしい。
「…？」
「赤色は『情熱』。桃色なら『可愛い少女』。白色は『心からの尊敬』。青色は」
そこまで言って、僕は口を閉ざす。
代わりに茉由が、にこりと笑って答えて。
「『叶わぬ恋』、よね？」
自信ありげに答えたそいつに、僕は鼻で笑ってみせる。
「違うよ」
「え？」
.
そのまま細い首に右手をかけ、ぐっと顔を寄せると。
歪んだ瞳が、僕の両眼を捉えた。
.
「青い薔薇の花言葉は…『奇跡』だ」
.
それだけ言い残して、僕は人混みをかき分け走る。
遠くから、茉由の金切り声がした。
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れい - 豊富な語彙が魅力的です。感情の表現が上手で感情移入しちゃいます！このお話が大好きです。一番好きです。 (2020年7月8日 17時) (
レス) id: 4faf975b53 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 糖分さん» こんばんは。ありがとうございます…！私も2人の幸せを祈るばかりです…更新頑張りますね。 (2020年5月28日 19時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - コメント失礼します。切ないお話ですがもうずっと2人とも幸せになって！！って祈ってます…これからもがんばってください！ (2020年5月27日 18時) (レス) id: e6fa3a79ce (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - いぬさん» いぬさん、はじめまして。作者は一刻も早く三郎くんと主人公に幸せになって欲しいので、多少無理してでも更新していきたいと思います。応援して下さり、ありがとうございます！(; ;)どうかこれからもお付き合いください。 (2020年5月19日 17時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
いぬ - はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いています！三郎君と夢主さんの今後の展開が読んでいて気になりました。美月さんのペースで頑張って下さい！！応援しています！！ (2020年5月18日 10時) (レス) id: db46678bdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年5月13日 4時
