○27『お兄さん』 ページ27
「三郎のことで泣きじゃくってたお前を見たあの日から、俺はもうこれ以上お前の泣く顔なんて見たくなかった」
ぽつりぽつりと語り始める二郎さんから、目が離せない。
「改まって言うのも変な気すっけど、俺、お前のこと結構好きだぜ。
あんな生意気な弟と仲良くしてくれてるのが嬉しかったし、アイツに素直で優しい友達ができて良かった、って、お前がウチに来てくれた時からマジで思ってた」
「っ…」
「Aはすげぇ優しくて、良い奴なんだから、お前にはいつでも笑ってて欲しいんだよ。お前はこれからもずっと、笑顔で生きていくのに値する人間だ」
視界がじわりと滲んだ。
この感情は、あの時と似ている。
一郎さんに「お前は俺たちのファミリーだ」と言って貰えた時。
無条件に愛を与えてくれた一郎さんの姿に、あの時の私はただただ心動かされて。
繰り返すが、これはあの時と同じ感情だ。
ただ自分の弟の友達というだけで、彼らは私に対してこんなにも良くしてくれる。
三郎くんのお兄さんたちは、どうしてこんなにも優しいの。
「まあそんなところ、だな。俺なりに考えて、お前に少しでも楽しんでもらえたら、なんて思ってよ…だからお前を誘ったんだ」
「っ…」
「……なんか恥ずいな！ つかよ、誘われた意味がどうとか、んな深いこと考えんな。お前の悪い癖だぞ」
「うう…すみません…」
嬉しさで泣きそうになるのを堪えながら、笑った。
そして二郎さんは、少し不貞腐れたように私を見つめて。
「…それとも、俺と一緒に夏祭りなんて迷惑だったか？」
「いっ、いえいえ決してそういうことでは！ ちゃんと、めちゃくちゃ、楽しかったので！」
慌てて否定する私に、二郎さんがははっと笑って。
「それなら、俺も満足だよ」と言って、私の頭をくしゃりと撫でた。
「ちょっ、二郎さん。私今お団子してるの、崩れたら困るのでやめてください」
「ああ？ お前それ、うちの一兄に同じことやられてもそう言うのかよ」
「…一郎さんだったら許しちゃうかな」
「んだと！？」
「ふふっ、冗談です」
二郎さんには、どれだけ感謝したらいいのだろう。
思わず私は小さな声で呟いた。
「…ありがとう、二郎さん」
「ん？ なんか言ったか？」
「気のせいです」
二郎さん。
こっそりだけど、あなたのこと、お兄さんと思ってもいいですか。
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れい - 豊富な語彙が魅力的です。感情の表現が上手で感情移入しちゃいます！このお話が大好きです。一番好きです。 (2020年7月8日 17時) (
レス) id: 4faf975b53 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 糖分さん» こんばんは。ありがとうございます…！私も2人の幸せを祈るばかりです…更新頑張りますね。 (2020年5月28日 19時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - コメント失礼します。切ないお話ですがもうずっと2人とも幸せになって！！って祈ってます…これからもがんばってください！ (2020年5月27日 18時) (レス) id: e6fa3a79ce (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - いぬさん» いぬさん、はじめまして。作者は一刻も早く三郎くんと主人公に幸せになって欲しいので、多少無理してでも更新していきたいと思います。応援して下さり、ありがとうございます！(; ;)どうかこれからもお付き合いください。 (2020年5月19日 17時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
いぬ - はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いています！三郎君と夢主さんの今後の展開が読んでいて気になりました。美月さんのペースで頑張って下さい！！応援しています！！ (2020年5月18日 10時) (レス) id: db46678bdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年5月13日 4時
