16二郎side《間に挟まれて》 ページ16
思えば一ヶ月ぐらい前から、兄ちゃんはどこか様子がおかしかった。
放課後に三人集まってサイファーをした時も、日々の食卓でも、三人で萬屋ヤマダの依頼に応じた時も。
彼はふとした瞬間に三郎のことを見つめては、どこか浮かない顔をしていて。
そして兄ちゃんは同時期に、自分の部屋の机に向かって何か調べ物をすることが増えた。
俺は興味本位で、兄ちゃんがトイレに行くために机から離れたその隙に机に広げられていたものを盗み見てしまって。
その資料のほとんどが、政治家、佐藤真織に関する内容のものだった。
世間一般向けに発信されてるような広報誌から、明らか裏ルートから入手したんだろって思えるようなリスト表とか、その媒体は様々で。
政治とか行政とかいったものにはクソほど興味のねぇ俺でも、佐藤真織という名前は知っていた。
確か、中王区のお偉いさん。なんでも財力と権力で色んな人間踏み倒して生きてるっていう噂。
一兄はどうしてこんなやつのことを調べているんだ…？
仕事の依頼でこいつのスパイでも頼まれてるならわかるが、そんな依頼、あったっけ…？
何かあったのかと問いかけても、兄ちゃんは「なんでもない」「いつも通りだ」の一点張りで。
俺はどことなく胸騒ぎがしていた。何か面倒なことが起きなければいいなくらいには思ってた。
＊＊＊
様子がおかしくなったのは兄ちゃんだけじゃなかった。
いやむしろ兄ちゃんよりも、三郎こそ不自然だったと思う。
いちばんはじめに異変を感じたのは、確か…あいつの唯一の友達であるAがウチに来てくれてから二日くらい経ったあたりから。
あいつ、Aのこと一切話さなくなった。
あんだけ飽きずに毎日毎日Aとのエピソードを話してたってのに、全くだ。
それだけで様子がおかしいって決めつけるのもどうかとは思うが、二ヶ月間緩みきった顔で話してたのを急にやめたともなれば、疑いたくもなるだろう。
喧嘩でもしたのか。でもそれならその間三郎の機嫌が多少なりとも悪くなることくらい、長年一緒に住んできた俺ならわかる。
なのにあいつはそんな様子を見せなかった。ヘラヘラ笑いながらいつものように兄ちゃんにべったりで、俺には喧嘩ばっか吹っかけてきて。
別に不仲になったわけではなさそうだったけど。
一兄も三郎も様子がおかしくて、俺はなんとなく、もどかしかった。
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れい - 豊富な語彙が魅力的です。感情の表現が上手で感情移入しちゃいます！このお話が大好きです。一番好きです。 (2020年7月8日 17時) (
レス) id: 4faf975b53 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 糖分さん» こんばんは。ありがとうございます…！私も2人の幸せを祈るばかりです…更新頑張りますね。 (2020年5月28日 19時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - コメント失礼します。切ないお話ですがもうずっと2人とも幸せになって！！って祈ってます…これからもがんばってください！ (2020年5月27日 18時) (レス) id: e6fa3a79ce (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - いぬさん» いぬさん、はじめまして。作者は一刻も早く三郎くんと主人公に幸せになって欲しいので、多少無理してでも更新していきたいと思います。応援して下さり、ありがとうございます！(; ;)どうかこれからもお付き合いください。 (2020年5月19日 17時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
いぬ - はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いています！三郎君と夢主さんの今後の展開が読んでいて気になりました。美月さんのペースで頑張って下さい！！応援しています！！ (2020年5月18日 10時) (レス) id: db46678bdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年5月13日 4時
