◯11《信じられるかな》 ページ11
あんなことがあった後で私は果たして本当に彼とこれまでと同じように接することができるのか疑念を抱いていた。
言葉にして伝え合っていない以上私たちの間に決定的な繋がりはないけれど、視聴覚準備室で私たちのした行為は限界まで「その先」に近づいた行為である。
放課後の私たちは二人きりで逢い引きをする。二人きりってことは、この前の視聴覚準備室での出来事のようにそういった雰囲気になることも考えられなくはない。
境界線なんて半分踏み込んでる。私たちの関係は言わば白にも黒にもならない灰色だった。
『お願い。明日からはもうしないから。だから今だけ、お前に触れさせて』
明日からもうしない、その言葉に、嘘はないのか。本当に、放課後に逢瀬をする私に触れることはしないのか。
あの日から一週間、私たちは放課後に会っていない。お互いに思うところがあったのだろう、暗黙の了解で、私たちはそれまで一切コンタクトを取らなかった。
だけど昨夜、彼からメッセージが届いた。「明日、会おう」という内容だった。
今まではあんなにも彼と過ごせる放課後がくることを待ち望んでいたのに、そのメッセージを見たときに、心臓がぐっと重くなる感じがした。
これは心地よい均等を壊しかけた私たちの宿命。今まで通りの私たちでは、もういられない。
変わってしまった私たちがこれまでと同じように時を過ごすことはもうできないのかな。きっと会ったらぎこちなくなってしまう。
不安ばかりを抱いたその夜はなかなか寝付けなかったけれど、そんな私の不安なんて簡単に砕け散るほど翌日の私たちは平和だった。
会えない時間はあれだけ胸が押しつぶされそうになっていたのに、会ってしまえばなんてことはない。
ただ好き、という気持ちが溢れて、彼との時間を幸せに過ごした。
何より嬉しかったのは、彼が茉由ちゃんと過ごしている時には見せない笑顔を私に向けてくれたことだった。
それでも盲目的に彼と楽しく話している中で虚無を感じることもあった。
私って何してるんだろう。恋人のいる相手とどうしてこんなに仲良く話してるんだろうって。
いくら三郎くんを信じているとはいえ、彼の心の方が移ろわないとは限らない。
茉由ちゃんとの時間を過ごす中で、彼の想いが彼女に流れてしまったら。
十分にありえる話。茉由ちゃんは完璧な子だもの。
三郎くんを疑うというよりも、自分が彼女に対して何もかも劣っているという事実が、私の心を苦しめるのだ。
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れい - 豊富な語彙が魅力的です。感情の表現が上手で感情移入しちゃいます！このお話が大好きです。一番好きです。 (2020年7月8日 17時) (
レス) id: 4faf975b53 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 糖分さん» こんばんは。ありがとうございます…！私も2人の幸せを祈るばかりです…更新頑張りますね。 (2020年5月28日 19時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - コメント失礼します。切ないお話ですがもうずっと2人とも幸せになって！！って祈ってます…これからもがんばってください！ (2020年5月27日 18時) (レス) id: e6fa3a79ce (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - いぬさん» いぬさん、はじめまして。作者は一刻も早く三郎くんと主人公に幸せになって欲しいので、多少無理してでも更新していきたいと思います。応援して下さり、ありがとうございます！(; ;)どうかこれからもお付き合いください。 (2020年5月19日 17時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
いぬ - はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いています！三郎君と夢主さんの今後の展開が読んでいて気になりました。美月さんのペースで頑張って下さい！！応援しています！！ (2020年5月18日 10時) (レス) id: db46678bdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美月 | 作成日時：2020年5月13日 4時
