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最終話 ページ6

言うなれば彼女は小生たちとは違う次元に生きる人間だ。

彼女の生きる世界において小生は、とある大きな物語の主人公の一人であるらしい。

そして彼女は自分と違う次元を生きる小生に恋をし、夢を見ていた。




ところで。遠く離れた人へ想いを伝えるための手段というのは、小生が思うに三つ存在する。



ひとつに、(ふみ)。現代のように携帯電話やSNSの普及していない古の世界では、永遠に書き残された文字こそが相手との重要な対話手段だった。


ふたつに、月。明治の文豪は“I love you”を「月が綺麗ですね」と訳したなどと伝えられるが、彼が本当にそうしたという証拠は未だ見つからないため、その手の逸話は恐らくデマなのだろう。

しかし非常に興味深い話だ。遠く離れていようと同じ月の下にいるという事実が、二人を繋ぐ重要な鍵になっていたとは。


そしてみっつに、夢。

夢の中でならば、小生は何度でも貴女に会える。

どんなに遠く離れていようと、生きる世界が違えど、瞳を閉じて思い浮かべる、眠りにつく、ただそれだけで貴女と私は繋がれるのだ。




遠く離れた彼女が俺のことを強く思ってくれているからこそ、俺は貴女をこうしてときどきこちらの世界に連れ込むことができる。


だが小生の力にも限界があり、彼女が夢を見る間だけこちらの世界に連れ込める代わりに、貴女は一切の記憶を失ってしまうらしい。


現世で愛してやまなかったはずの小生のことを、彼女は忘れてしまう。それが切ないばかりに、彼女の夢の中で会えた時はいつも、高架下で貴女を抱き締めた。



そして現世(うつしょ)で眠る彼女が目覚める直前、こちらの世界の貴女は決まって「家に帰りたい」と言い出すのだ。


俺は貴女とずっと一緒にいたい。この夢から覚めて欲しくない。

だからその度いつも俺は「貴女に帰る場所はない」なんて、意地悪なことを言うのだけれど。
それでも俺の願いは叶うことのないまま、向こうの世界の彼女は目覚め、こちらの世界での貴女は長い眠りにつく。




腕の中で目を閉じる貴女の唇に自分のものを重ね合わせ願った。


どうか来世ではこの人と同じ世を生きれますように。

欲を言うならこのちっぽけな世界に生きる、大事な仲間たちも一緒に連れてそちらまで行けたなら。



「…僕の目の前でイチャイチャしないでくれる?」

「いつも自分の彼女を事務所に連れ込んでる貴方には言われたくないですね」

「えへへっ」



今はまた、次の夢の中で。

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美月(プロフ) - 糖分さん» コメント気づかず遅くなってしまい申し訳ございません(; ;)ありがとうございます、そう言っていただけて嬉しいです…!これからも応援よろしくお願いします。 (2020年5月27日 18時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - ひえ〜〜好きです(;▽;)らむだくんや三郎くんの小説も応援してます! (2020年5月22日 12時) (レス) id: e6fa3a79ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美月 | 作成日時:2020年5月22日 3時

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