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夢野さんと並んで歩いていく間、街を彩る煌びやかな若者たちを見て、彼は様々な話を私にしてくれた。



「あそこのカフェで話しているカップルの片方は、前世がかぐや姫、もうひとりは頭中将。彼らは宿世からの強い縁により、現代になってようやく幸せな再会を果たしたのですよ」

「へぇ…」

「そして今すれ違った配達員。彼は実は陰陽師という裏の顔を持ち、これまで多くの人の行く末を占ってきました。ですが、その予知能力の使いすぎにより、彼はそう長くないうちに命を終えるのです…」

「そうなんですか…」


「ま、全部嘘なんだけどね」



敬語を崩して笑ったその顔は悪戯心に満ちていて。

私はといえば、彼のあまりに流暢な話し方と真剣な顔つきにまんまと騙されてしまった。


「ま…まあ…そうですよね。そもそもかぐや姫も頭中将も御伽噺の中の人物だから、現実世界に生まれ変わって生きることなんて有り得ないし、陰陽師だって、冷静に考えたらこの時代には…」

「貴女は真面目ですねぇ。小生の嘘にそこまで真剣になってくださるとは」



夢野さんはふっと笑ってから、「さあ、行きましょう。彼らに会いにいかなくてはなりません」と続け、再び私の手を引いて歩き出した。




とはいっても。

彼は目的であるラムダさん、ダイスさん、という人の元まではなかなか行こうとしなかった。


ふらりと書店に寄っては古本を購入したり、気まぐれに入った喫茶店で紅茶を飲み出したり、スクランブル交差点の隅で人間観察をはじめたり。

そして今、高架下で不意に私を抱き締めたり。



「夢野…さん?」



肩口に埋められた顔にそっと声をかけるが、彼は返事をしてくれない。

私を抱く夢野さんの腕は、着物越しだと気づきにくいが確かに男の人のものだった。

それでも後頭部に回された手のひらはやはり女性のように柔らかくて、そのアンバランスさに少しだけ戸惑ってしまう。

私を連れ回すその様は絶対におかしいはずなのに、何もかもを受け入れてしまえるのが奇妙だった。

それは、彼の纏う癒しの雰囲気のせいか。何をしていても許してしまうのは、彼と一緒にいるせいだからなのか。

うん、それは間違いなくあるだろう。一緒にいて楽しくない男に連れ回されたら、それはもう不快でしかないはずだから。

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美月(プロフ) - 糖分さん» コメント気づかず遅くなってしまい申し訳ございません(; ;)ありがとうございます、そう言っていただけて嬉しいです…!これからも応援よろしくお願いします。 (2020年5月27日 18時) (レス) id: 37bdf40b5c (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - ひえ〜〜好きです(;▽;)らむだくんや三郎くんの小説も応援してます! (2020年5月22日 12時) (レス) id: e6fa3a79ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:美月 | 作成日時:2020年5月22日 3時

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