宝:137 ページ17
ドクドクとなる心臓を抑え込んで、私は遊佐さんに言う。
「待って……安室さんは何も悪くない!
私が勝手に、ついて行っただけだから……!」
「A、構いませんよ」
「でも、安室さん怒られちゃうっ……」
無表情の遊佐さんは何を言うわけでもなく、私と安室さんが靴を脱ぐのを待っている。
安室さんは薄らと微笑むと家にあがり、「連れ出したのは事実です」と私に向かって手を伸ばした。
「…………」
納得がいかないながらもその手を掴んで私も家へと上がれば、
先を歩きはじめる遊佐さんについて謙三さんの元へと向かう。
連れられたのは謙三さんの私室でも、広間でも客間でもなく、
たまに会社関係の人が来た時に使っている応接室だった。
失礼します、と中に入れば、上座にドンと構えた謙三さんがのんびりとお茶を飲んでいる。
お風呂も済ませているはずなのに、なぜかよそ行きの上質な着物を身に纏っていた。
お客人が来たからだろうか。
「帰ったか……。そこに、ふたりとも座りなさい」
威圧感のある声でそう言われ、私と安室さんは用意されていた座布団の上に正座する。
静かな室内に、謙三さんのお茶を啜る音がやけに大きく聞こえた。
それからしばらくの沈黙が続き、段々と無意識に背が丸まって来た頃、
厳格な声で「今は何時だか、わかっておろうな」と謙三さんが言い、私の背が伸びる。
……怒っているのかは、わからなかった。
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作者名:謙 | 作成日時:2018年5月23日 22時