執着。4 【安室透】 (ページ15)

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宝＊135 ページ15

思えば、安室さんがこうして自身に関する質問に答えてくれるのは初めてではないだろうか。

「彼女には、決して傷つけたくない人物がふたりいるんです。
　そして僕にも、決して傷つけたくない人物、Aがいる……。
　それから、あの人にとってバレると都合の悪い情報を僕は握っている。
　それをバラさない代わりにあの人と協力関係に。
　そしてお互いの傷つけたくない相手を決して傷つけないという契約を結びました」

中途半端に知っていたその情報を、どんどんと頭の中に増やされていく。
赤井さんの話では、その組織のことを知っていて、
かつ組織にとって邪魔な存在ならば、その人物は殺されると言っていたっけ。
組織にとって赤井さんは殺すべき存在で、その赤井さんを匿っている昴くんも、ばれたら。

そう思うと怖くて、背筋が震える。
少し腕の力を弱めた安室さんは「怖いですか？」と私の顔を覗き込む。
正直に少しだけ怖いと言えば、彼は眉尻を下げた。

「貴女のことは、必ず守りますから」

言いながら彼は今度、私を正面から抱きしめた。
頭を撫でられ、落ち着きが広がっていく。

「ベルモットは……単純に、Aが気になっただけだと」

何もしない。ただ気になっていた。
たしか彼女はそんな風に言っていた。
なら本当に、私が気になっただけだというのだろうか。

―――「ゆっくり、ゆっくりと溺れさせていくのが得意だから」

クスリと綺麗な笑みを零したあの女性は、悪い組織の幹部クラスの人間。
安室さん、バーボンのビジネスパートナー。

「安室さん」

「はい？」

「その人が言ってたんだけどね。
　私の知っているバーボンはもうアナタに溺れてるみたいって」

「！？」

知った今なら、なんとなく想像の広がってしまう内容。
彼の胸に埋めていた顔を上げて、驚きと戸惑いに揺れるライトブルーの瞳を見つめる。

「……私、安室さんが好きだよ。
　どんな安室さんも、絶対世界一好きな自信あるよ。大好き」

じぃっとその瞳を見つめれば、彼は一度瞼を閉じた。
次に開かれたその瞳はなんだか少しだけ鋭くなっていて。

「とっくの昔に、溺れてる」

「んんっ……！！」

安室さんによって奪われた私の人生二度目の口づけは、
前回よりもひどく優しく、けれど想像よりもちょっぴり強引なものだった。