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宝*121 ページ1

タクシーで家に帰り着くと、キノが丁度庭に出ていた。


「おかえりなさいませ、お嬢様。優依様」

「ただいま」

「ただいまー!」


庭の掃き掃除をしていたキノは箒を立てかけると、
「タクシーで?」と門のほうを気にする。


「そう。なんか事件があったみたいで、杯戸小に安室さんがいたの。
 心配だからタクシーで帰れって呼んでくれたんだ」


お金も安室さんが出してくれたと言えば、なら今度返しておくと言う。


「それにしても、安室様もだいぶ過保護になられましたね」

「それキノが言えないよ」


クスクスと笑って、キノが開けてくれた玄関を潜る。
ここに来てから本当に、箸より重いものは持たせませんとばかりにみんなは動く。
台所に入ろうとすれば待っていてくださいと追い出され、
掃除をしようとすれば床に足をつくなんてはしたないと言われ。


だから今日は、少しだけ。


「ねえキノ。さっき優依くんと話したんだけどね」

「はい」

「明後日は休日だから、ふたりでお夕飯作りたいんだ。
 ほら、優依くんといる最後の夜だし」



そう言えば、彼女は少しだけ目を見開いた。


「ぼく、おねーちゃんとごはんつくりたい!
 あのね、はんばーぐ!」

「ね?いいでしょ?」


お願い!と両の手を顔の前で合わせれば、それに倣って優依くんもお願いポーズをとる。
渋り顔のキノは、謙三さんと板前と相談すると言って、また庭へと戻った。

あれはきっと、了承してくれる顔だ。



「やったね、優依くん!」

「うん!」



お母さんと一緒に何かをするとか、料理を作るとかの思い出がなく、
いつも祖父とふたりで味気ない食事だったという優依くんに、
少しでもいいから、そういう思い出を残してあげたかった。

一緒に経験してほしかった。


私も最近は自分でキッチンに立つことがなかったから、久しぶりにいいだろう。
優依くんとハイタッチして、自室へと向かった。

宝*122→



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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:アニメ
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作者名: | 作成日時:2018年5月23日 22時

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