執着。【安室透】 (ページ39)

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宝＊39 ページ39

「くそっ！」

寝室のパソコンを調べようと思ったものの、そのパソコンにはパスワードロックがかかっており、
そのコードがわからずに毛利名探偵はイラついたようにそう声をあげた。

「面倒くせーことしやがって……」

そう言った毛利名探偵の隣で、安室さんがしゃがみ込み机の下を覗く。
その行動に首を傾げた私は「……安室さん？」と声をかけるけれど、
彼からの返事は少し待ってというような身振りだけだった。

「んじゃとりあえず、樫塚圭の語呂合わせで……」

「う～ん……」と頭を悩ませる毛利名探偵。
カシツカケイ、でどんな語呂ができるかと私も考えていると、
安室さんが突然に「あ～」と声を上げた。

「皆さんはパスワードとか、どうされてます？」

突然の質問に首を傾げながらも、蘭さんは生年月日、
毛利名探偵は自身の名前の語呂"5563(小五郎さん)"、
私は好きな数字の組み合わせだと答えると、安室さんは「いや……」と続ける。

「とても覚えきれない長いパスワードの場合ですけど」

「あ、そっち……携帯のメモ帳とか」

「私もメモ帳に……」

私と蘭さんがそう言うと、毛利名探偵はテーブルの下に手を伸ばしながら答える。

「俺なら紙に書いて、誰にも見えねぇようなこういう場所に……ん？」

カサリ、と音がして、テーブルの下を「おっ！？」と覗き込んだ毛利名探偵。
顔を上げたときにはその手にパスワードの書かれた紙を持っていて、
さすがだと蘭さんと安室さんは言う。けれど。

「…………」

さっきテーブルの下を覗き込んだ安室さんが、私の脳裏に浮かぶ。

「あむろ、さん……？」

「ん？どうしました？」

「……ううん、なんでもない…………」

毛利名探偵より安室さんのほうが優れているのでは。
その考えは、私の中で少しだけ膨らみ、言い知れぬ不安が私の胸を覆った。