宝*32 ページ32
樫塚さんは、10分以上経った今も、まだリビングに戻って来ていない。
「樫塚さん、戻ってこないね」
「トイレかなぁ?」
「じゃあ、とりあえず我々だけで盗聴器を探し始めましょう」
安室さんはそう言うと、蘭さんに部屋の中央で音楽を最大音量で流すようにと続けた。
その音を頼りに盗聴器を探しだすことができるそうだ。
そうして次に安室さんは、私に目を向けた。
「貴女は……」
いいよ。どうせリビングで待っていろって言うんでしょ。
それとも、車に戻ってろとか。
そういう世界は知らないままでいてほしいって、言ってたもんね。
不貞腐れたように安室さんから目を逸らす。
別に、安室さんがそう望むのならそれでもかまわない。
守りたいという気持ちはもちろんあるけれど、明らかに私には不向きだ。
「……とりあえず、僕の視界から外れないところにいてください」
「……え…………?」
彼の言葉に思わず呆然とすると、ふっと口元に笑みを浮かべた安室さんは、
腕に抱き着いている私の頭をひと撫ですると意地悪な笑みを深める。
「それとも、車に戻りますか?」
本当はそうしてほしいけど。
そんな目をして私にそう聞いた安室さんを少しだけ困らせてみたくて、
安室さんの傍にいたくて、私は彼のその問いに「一緒にいる」と答えた。
「ありがとう、安室さん」
「まあ、ひとりにするのも心配ですしね」
「?」
「貴女は僕の大事な人なので」
どういうことと聞きたくても、なんだか聞いたらいけない気がして。
先に部屋を出ていた蘭さんと毛利名探偵を追いかけて、私たちもリビングを後にした。
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作者名:謙 | 作成日時:2018年4月10日 0時