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宝*27 ページ27

ユサさんが角を曲がると同時に、何人かの人が入ってきた。
安室さんによると、彼らは皆警察らしく、どうしてと聞けば、
彼は少しだけ迷ったような素振りをしたあと、「……人が死んだんです」と小さく言った。


「え……?」

「だから貴方には、ポアロで待っていてもらおうと」

「いる」

「え?」

彼はきっと、私のことを思ってポアロで待っていろと言うんだろう。
けれど私はその言葉を遮り、彼を見て言った。

不安や恐怖がないと言えば嘘になる。
だけど昼、蘭さんやコナン君は毛利名探偵や安室さんの探偵の話に加わっていた。
今だってふたりは、探偵事務所の中にいて、その事件に関わっている。
探偵の傍にいるにはきっと、そういう経験も必要なんだ。


「私も、ちゃんと事務所にいる」

「……僕の傍に、いるためですか」

少しだけ視線を落として言った安室さんに「うん」と言えば、
彼はギリっと小さく歯ぎしりをして、私の肩を掴む。


「そのためだけに、そんなことはしなくていいんです」

苦しそうに顔を歪めた安室さんを見て、私はママの言葉を思い出した。

―――「想いはちゃんと、言葉にして、全部伝えるのよ」

大切な人にはとくに、特別に。
どうしてこのタイミングでなのかはわからないけれど、
離れ離れにならないようにと、ママは言っていた。


「……ただ傍にいたいだけじゃないよ」

「え……?」

「安室さんの傍にずっといるために、今一緒にいたいの。
 探偵の安室さんは、これから何度もこういう場面に遭うんでしょ?
 だけど私は、その時居合わせても守られるばかりなんでしょ?」


「そんなのは嫌だよ」と、私は彼の右頬に左手を添えた。

「安室さんには敵わないけど、私も安室さんを守りたい」

安室さんの目をじっと見つめれば、彼の驚きに染まっていた瞳は柔らかく笑みを浮かべた。


「……手が震えていますよ」

「……だって、やっぱり怖いもん」

それでも守りたいと正直な気持ちを私が言えば、
彼は頬にある私の手を降ろし、自身の両手でそっと包み込んだ。

困った妹だなとふっと笑った安室さんは「それでも」と目を細めた。


「そう思ってくれているのなら尚更、貴女はポアロで待っていてください」

「え……」


包まれていた手は、いつのまにかしっかりと繋がれ、
その手を引かれるがまま、私は階段を降り、ポアロへと連れて行かれた。

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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:アニメ
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作者名: | 作成日時:2018年4月10日 0時

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