宝*24 ページ24
鋭い目つきをしたそのユサさんは、黙ったままの私に続ける。
「謙三様は急なお仕事が入りました故、私が使わされたのです。
直接お迎えにあがれないこと、強く嘆いておられました。
それから、先程の無礼を、あの青年にお詫びしたいとも」
「!」
その言葉に、伏せていた視線をバッと上げる。
彼の表情はさっきからピクリとも動かず、まるで作り物のようだけれど、
私が「安室さんに?」と聞けば、「はい」と確かにその唇は動いた。
「……私は、上杉Aじゃない。秋月Aだよ。
上杉の姓は名乗りたくない」
パパとママの間に生まれた、その証拠だ。
「ですが謙三様は、A様が上杉の家に入ることを強く望んでおります」
「私は望んでない。それに……」
言葉を切り、唇をきゅっと噛んだ私に、ユサさんは言う。
「……あの青年の元を離れたくない、と?」
「…………」
その通りだ。
無言を肯定と受け取ったらしい彼は、「しかしながら」と続ける。
「彼のほうはどう思っているのか、わかりますか?
謙三様は、彼により深く傷ついてしまうA様を思い」
「どうして私が傷つくこと前提なの?
私は今、彼と一緒にいて幸せなのに!」
彼の言葉を遮り叫ぶように言った瞬間、パァン!と、毛利探偵事務所から音が響いた。
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作者名:謙 | 作成日時:2018年4月10日 0時