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宝*17 ページ17

信じられない。
安室さんはそんな人じゃない。
怪我をした私を助けてくれた、いいひとだ。

……いや、例え悪い人でも、私にとって彼は大好きなお兄さんだ。
この人のことを悪く言うなんて、許さない。



「私は安室さんが大好きなの!
 安室さんのこと悪く言う人と一緒にいたくない!」


叫ぶように言い、「行こ!」と右手で安室さんの腕を強引に引っ張る。
戸惑うようにしながらも足を動かした安室さん。

謙三さんの声は聞こえないふりをして、私はただ雨の中、安室さんを引いて歩いた。







「雨は身体に障りますよ」


しばらく歩いた先で、彼は私の腕を引きそう言った。
申し訳ないことをした。彼まで全身びしょぬれだ。


「……ごめんね、安室さん」

「何故?僕は嬉しかったですよ」


どこに嬉しがる要素があったのかは分からないけれど、
それでも彼は嬉しいと言い、「とりあえず雨宿りしましょうか」と私に自身の上着を被せる。
安室さんの匂いに包まれている感じがして、不安定に揺れる心が少しだけ落ち着いた。


シャッターの降ろされたお店の軒下で雨を凌ぐ。
「にしても酷い雨だな……」と呟く安室さんの降ろされた右手。
その人差し指だけをきゅっと握れば、ふっと小さく笑う声がした。


「泣かなくてもいいでしょう。
 あとで一緒に、謝りに行きましょうね」


違う。私はあの人のことなんてなにも心配していない。
ただ貴方と離れたくないだけなの。
ずっと一緒に、いたいだけなの。


……わかってるよ。こんなの我儘だってこと。
ちゃんと、わかってる。



「――――――」

何もいらない。なんでもする。だから傍にいて。
私から、離れていかないで。


そう言いたかった唇は、雨の中聞こえた「安室さん?」という女の子の声で動かなかった。

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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:アニメ
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作者名: | 作成日時:2018年4月10日 0時

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