宝*11 ページ11
その人は、
上品な着物を着て、杖をついてはいるけれど、とても厳格そうなお爺さんだ。
彼は、私のママの父親だと言った。
自分は私の、実の祖父だと。
今から約18年前。
娘が見知らぬ男を連れて、妊娠の報告に来たという。
そのことに激怒した自分はふたりを咎め、二度と会うことは許さんとした。
そして娘には、腹の子を降ろせ、とも。
上杉家は約500年前、かの戦国大名、上杉謙信が秘密裏に育てていた息子の子孫の家系。
上杉謙信の実子の存在が世に出ることはなかったが、
息子はひっそりと生き延び、世代を継いでいったという。
由緒正しき上杉の娘と、一般家庭の出であった男の婚姻は認められず、
けれども娘は家を出て、男と共に行方をくらました。
「お前の母、若菜と、父、創は駆け落ちをしたのだ。
ワシは好きにさせておけと、家の者に言い、連絡を絶った」
ママとパパが、駆け落ち。
親族がいないのではなく、許されなかった関係故の、その立場。
私の祖父と名乗るその人、謙三さんは、悔しそうに眉を寄せている。
「確かにあのとき、ワシは怒っておった。
代々上杉本家は、地位ある家の者と婚姻を交わしながら復興させていき、
ワシの3代前でその地位は揺らがぬものとなったのだ」
ママは自由な人だった。
縛られることを苦手とし、自分の思うままに行動し、その結果を真摯に受け止める人だった。
ママが家を出た理由が、分かった気がした。
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作者名:謙 | 作成日時:2018年4月10日 0時