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宝*01 ページ1

その日は私の、17回目の誕生日だった。
家族揃ってお祝いに遊園地へと出かけるのが毎年の恒例で、
それはもちろん今年も例外なく、一日中遊び、父の運転で帰路についているとき。



小さな家族の大きな幸せを、ひとつの悲劇が襲った。




「早く救急車と警察を!!」

「人を運ぶの手伝ってください!」


喧騒に薄らと意識を浮上させると、自分の身体が思うように動かないことに気が付く。
何が起こっているのかと瞼を持ち上げるとそこには、血まみれで倒れる母。
そして少し視線を動かせば今度は、血の中に漂っている父を見た。

あまりのことに声が出ない、というのももちろんだけれど、
苦しくて痛くて、なのに身体の感覚がなくて、声が出ない。

ただ目の前の状況を見つめるだけ。

血塗れの母の腕は私をしっかりと包んでいて、
血に浮かぶ父は俯せに頭をこちらに向けていた。

私は、ふたりに守られたのだ。


けれど、それでふたりがいなくなったら、意味がない。
私には他に、誰もいないというのに。


いっそ私も一緒に。
そう思い、薄れる意識を手放そうとした瞬間、ふわりと身体が浮かぶのを感じた。


「しっかりしろ!
 燃料が漏れてて危険だから少し移動するが、我慢してくれ」


力強く、それでいて優しい、とても暖かい声。
一度閉じられた瞼はなかなか開いてくれなくて、
力の入らない腕を必死に持ち上げ、私を抱くその人の胸元を掴む。


「! ……意識はあるな。
 すぐに救急車も来る。もう少しの辛抱だ」

「…………」

知らない声なのに。知らない人のはずなのに。
何故だか酷く懐かしく感じると同時に安心した私は、
最後に彼の胸元をきゅっと握って、微かな意識を手放した。

宝*02→



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設定タグ:名探偵コナン , 安室透 , 降谷零   
作品ジャンル:アニメ
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作者名: | 作成日時:2018年4月10日 0時

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