当たり前 ページ8
そっと離れた身体。まだ、ゾムさんの体温が残ってる。
「そろそろ帰るわ。」
少し寂しい。けれどいつまでもそんなこと言ってられない。
裏口へと進む。揺れる尻尾。綺麗な茶髪。緑のパーカーからはみ出ている大きな耳。私の目にしっかりと刻んだから。もう大丈夫。
『…今日はありがとうございました。』
「俺も楽しかったで。」
笑う時、目の下に少し皺を作ってくしゃっと笑う狼さん。尻尾もバタバタ揺らしてるから嬉しいのかしら。
『それじゃ。』
小さく手を振る。
「おん。」
頭を優しく撫でられる。私も撫で返したいけれど届かないし…。
「あっ、また来るわ。」
『えっ。』
扉は大きな音を立ててしまった。
gr「ん？なんか獣臭くないか？」
数日後、久しぶりに遊びに来たと思ったら臭いという。まぁ狼を連れ込んだ記憶しかないけれど。
『グルちゃんの鼻が獣臭いんじゃないって痛い！！』
gr「阿保か。」
レディに手刀は駄目だと習ったはず。はず。
gr「はぁ〜〜〜。寂しがってると思って会いに来たのに、めちゃくちゃ元気やないか。」
『グルちゃんが私の心配とか、明日雪降るんじゃない？』
gr「今度は目潰しがええんか？？」
『ちゃいますちゃいます。』
私と出会う前、グルちゃんは西の方に居たから方言がたまに移る。まぁいいんだけどね。方言ってなんかよくない？
gr「…最近どうや？変わったことはないか？」
『特に。』
狼と出会ったことぐらいだ。
gr「ん。なんかあったらすぐ俺を呼ぶんやで？」
『やだグルちゃん男前〜〜〜。』
gr「知ってる。で、話変わるけど最近国王が変わってな。」
うっ、ん。なんか最初らへん引っかかった気がするけどまぁいいや。そう言えば市場でおばさま達が話していたな…。前の国王がお亡くなりになり、代わりに…誰だっけ、思い出せない。
gr「――って聞いてるか？」
『うんうん。』
gr「はぁ〜〜、取り敢えず城にはあんま近づくなよ。国王、心無いクセに綺麗な女をすぐ隣に置きたがる屑やから。」
『いいじゃない。可愛い女の子って。』
gr「そっちちゃうやろ。」
『…そう？』
話しが噛み合ってないのは私のせいか。まぁいいや。グルちゃんは心配性だな。フーン、心無い…ねぇ…、って聞き覚えあるけど、気のせいかな。
グルちゃんのために焼いたマカロンも全てなくなっていた。甘い紅茶も。
gr「当たり前だ。」
私が作ったお菓子も淹れた紅茶も全部食べるのが当たり前。
グルちゃんのために作るのも当たり前。
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ゆい - この、物語をつくっていただき、ありがとうございます。この一言に尽きます。 (2020年7月27日 22時) (
レス) id: 63830571c3 (このIDを非表示/違反報告)
や〜神(プロフ) - まじで泣いた。素敵な作品ありがとうごさいました。 (2019年5月13日 12時) (レス) id: 73f7a8851f (このIDを非表示/違反報告)
眠猫(プロフ) - ミントさん» ありがとうございます！！感想を頂いて、久しぶりにこちらも見返して、時が経つのは早いなと実感しました…。連載中の物もありますのでよろしければそちらもどうぞ！！ (2018年12月23日 19時) (レス) id: 6df2bbbd20 (このIDを非表示/違反報告)
ミント - 作者さん何でこんなに泣かしてくれるんですか本当に感動しました。ありがとうございます (2018年12月23日 13時) (レス) id: 41f91518d5 (このIDを非表示/違反報告)
猫うどん(プロフ) - 眠猫さん» ありがとうございます！！もちろんです！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: b69debf442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：@眠猫。 | 作成日時：2018年4月30日 16時
